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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

目標勾配仮説と万有引力

『女子まぐ!人生岐路岐路クリニック:子供を作るべき? 作らないべき?』
を読んで
http://woman.mag2.com/kirokiro/
(URLは変わりますが、このURLからバックナンバーとして見ることができます)
次の部分

「同レベルだからこそ悩んでいる」わけで、その場合、とにかく手早く、片方に転んでしまう方がベストです。


 このアドバイスの背景には「目標勾配仮説」があるのだろう。
 「心理学ビギナーズトピックス100」(齋藤勇編、誠信書房)56ページ「迷っていないで、行動を!」に次のように述べられている。

 心理学の目標勾配仮説はどちらか一方の方を無理にでも決めてしまい、とりあえず、決めた方に一歩でも半歩でも近付くのが良い、としている。
 というのは、ミラーの目標勾配仮説は、欲求や動機の強さは、その目標に近付けば近付くほど強くなる、としている。


 同じ本の74ページ「目的地が近付くと、足が速くなる」には次のように述べられている。

 ハルはこのときの動物の走る速さを測定し、目標箱に近くなるにつれてスピードが増すことを見出した。この実験のように、一連の行動の最後に報酬があるような場合には、報酬の効果は報酬に近いところでなされる行動ほど強く作用する。


 この心理はよく分かる。単純作業をしている時、「もうすぐ終わりだ!」と思うとペースが上がる。マラソンに参加した時もゴールが見えたらペースが上がった。どちらも報酬が近い場合であるが、遠い場合もある程度は成り立つのかもしれない。

 私は目標勾配仮説を耳にする度に物理学の「万有引力」の法則を連想している。引力は距離の二乗に反比例する。距離が近ければ近いほど引力は強くなる。斥力も同じである。距離が近ければ近いほど斥力は強くなる。心理の面でも、嫌なことに近付けば近付くほど離れたい気持ちが強くなることがあるが似ているかもしれない。物理学ではたくさんの物質との間に同時に引力や斥力が働いている場合の動きも計算できる。目標勾配仮説についても同じように数式化できたら面白いと思う。正反対の方向から同じ強さで引力が働いたり、あるいは同じ強さで斥力が働いたり、あるいは同じ方向から同じ強さの引力と斥力が働いたり、引力と斥力が一定周期で働いて振動したり…、コンフリクトを数式で解析できたら非常に面白い。
 選択に迷っているのは正反対の方向から同時に引力が働いているようなものである。少しでも片方に近付けば近付いた方の引力の方が強くなり、そちらの方に引っ張られる。同じように「どちらを選択すべきか?」で迷った場合は、どちらかに一歩でも近付けばそちらに向かって進むことになる。ついでに、一度選択すると、その選択が間違っていないことを確認しようとする心理が働く。認知的不協和理論で説明されているらしい。例えば、どのパソコンを買うべきかで迷い、どれかを買ってしまった後に、買ったパソコンの広告を見て長所を探して「買って良かったんだ」と納得したり、買わなかったパソコンの広告を見て欠点を探して「買わなくて良かった」と思ったり…。
 そんな訳で、どちらに進むべきか迷った時にはとりあえずどちらかに決めて進んだ方が楽なようである。もちろん、選択しなかった方の選択肢からも引力が働くので迷いは消えないが、行動せずに迷っているよりは増しだろう。

 この目標勾配仮説で説明される心理は、選択に迷っている人には便利なのだが、厄介な問題を引き起こす。簡単に言ってしまえば「間違った選択をした時に、反省して悔い改めにくくなる」ということである。
 例えば、イラクに自衛隊を派遣するかどうか首相が迷っていたと仮定しよう。派遣することに決め、派遣に向けて何らかの行動を起こしたとしよう。すると後は派遣の実現に向けて突っ走るのみである。実際はコンフリクトが生じるまで迷っていなかったかもしれないが…。他にも問題のある何らかの政策が決まる時、目標勾配仮説によると、初期の段階で止めないと止めにくくなる。何らかの目標に向かって頑張っている時、始めて間もない頃に邪魔されるよりも目標が近付いた時に邪魔される方が腹が立つと思うが、同じようなものである。実現間近の政策は実現への引力が強いため阻止するのが難しくなる。問題のある政策はアイデアが生まれた段階で阻止した方が良い。
 他には、ちょっとでも犯罪に手を染めたら犯罪者の道を突き進んだり、ちょっとでも麻薬に手を出したら薬物依存症になるまで突き進んだりするのも目標勾配仮説で説明できるかもしれない。目標があるわけではないと思うが、方向が決まったらその方向に進んでしまいエスカレートする点が似ている。
 間違った方向に進んでしまった場合の対策だが、進んでいる道に障害物をおいても、その障害物に何度もぶつかり、目標が近ければ強くぶつかるだけで、なかなか改善されないかもしれない。それよりは、反対の方向からより強い引力を働かせる方が良いのかもしれない。反対の方向からではなく道の脇から引力を働かせればより簡単に道を変えさせることができるかもしれない。進んでいる方向とは垂直な方向から引力を働かせ続ければぐるりと円を描いて反対の方向へ…。

 長くなってしまったが、コンフリクトと目標勾配仮説の話題に触れる度にそんなことを考えている。


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