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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

支援費制度と所得保障

『イギリスにおける障害者の地域生活支援』
(障害者(児)の地域生活支援のあり方に関する検討会 ヒアリング資料/2003.8.26)
を読んで
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/08/s0826-2c.html

 資料ではイギリスのダイレクト・ペイメント制度が紹介されている。

 障害者自立支援法案は衆議院の解散に伴い廃案になったが、衆議院選挙で与党が3分の2以上の議席を獲得して圧勝したので、再度提出され、すぐに可決されそうである。この障害者自立支援法案には「応益(定率)負担」という問題があったが、所得保障とセットなら応益負担を認める意見もある。以前に『応益負担と所得保障』で、所得保障セットで応益負担を導入するならば、どのような理念で仕組みを考えるべきかを述べた。問題は、障害者一人ひとりに合った保障費をどのように決めたら良いか、である。必要な支援は障害者一人ひとり異なるので、政府が保障すべき額も障害者によって異なる。過不足なく保障する仕組みが必要である。日本には既に支援費制度があり、非常に優れた制度だと思うが、所得保障の仕組みではない。そこで、ダイレクト・ペイメント制度を参考にして支援費制度を所得保障制度の仕組みに変えたらどうなるか考えてみた。

 支援費制度の基本的な仕組みは、次の通りである。
「障害者白書 平成17年版」の文言を利用させていただいた。)

支援費制度の基本的な仕組み
図1 支援費制度の基本的な仕組み
[1] 障害者福祉サービスの利用について支援費の支給を希望する者は、必要に応じて適切なサービスの選択のための相談支援を市町村等から受け、市町村に対し支援費の支給申請を行う。
[2] 市町村は、支給を行うことが適切であると認めるときは、申請者に対して支援費の支給決定を行う。
[3] 支援費の支給決定を受けた者は、都道府県知事等の指定を受けた指定事業者又は施設と契約する。
[4] 指定事業者又は施設は、契約した利用者にサービスを提供する。
[5] サービスを利用したときは、本人及び扶養義務者は、指定事業者又は施設に対し、サービスの利用に要する費用のうち、本人及び扶養義務者の負担能力に応じて定められた利用者負担額を支払う。
[6] サービスを提供したときは、指定事業者又は施設は、市町村に対し、サービスの利用に要する費用の全体額から利用者負担額を控除した額を支援費として請求する。
[7] 市町村は、指定事業者又は施設に対し、サービスの利用に要する費用の全体額から利用者負担額を控除した額を支援費として支給する(ただし、当該支援費を指定事業者又は施設が代理受領する方式をとる)。

 この支援費制度の基本的な仕組みを次のように変更する。

支援費を利用者に支給する仕組み
図2 支援費を利用者に支給する仕組み
[1] 障害者福祉サービスの利用について支援費の支給を希望する者は、必要に応じて適切なサービスの選択のための相談支援を市町村等から受け、市町村に対し支援費の支給申請を行う。
[2] 市町村は、支給を行うことが適切であると認めるときは、申請者に対して支援費を全額支給する
[3] 支援費を支給された者は、都道府県知事等の指定を受けた指定事業者又は施設と契約する。
[4] 指定事業者又は施設は、契約した利用者にサービスを提供する。
[5] サービスを利用したときは、本人及び代理人は、指定事業者又は施設に対し、サービスの利用料を全額支払う
[6] 市町村は、指定事業者又は施設に対し、サービス利用状況の報告を求め、必要に応じて、適切なサービスが提供されているか確認する(支援費制度を利用した不正が行われていないか確認する)。
[7] 指定事業者又は施設は、市町村に対し、サービスの利用状況を報告する(市町村から要求があったときは、サービス利用状況の調査に協力する)。

 ここで、「[5] 利用料」が「全額負担」でなく「1割負担」だとしたら「市町村」から「利用者」へ支給される額[2] は「支援費」の1割になるが、「市町村」は「事業者」へ「支援費」の9割を支払う必要がある。図1と図2を組み合わせた仕組みで、図2よりも複雑になり、市町村の事務負担も大きくなりそうである。以下では図2について述べる。

 図2では利用者が必要に応じて支援費の支給を申請する。自分に必要な支援を一番良く分かっている障害者本人が支援内容を決めて、必要な時に必要な支援の利用料(支援費)の支給を市町村に申請する。必要ない支援費の支給は申請しないし、申請しても必要であると認められなければ支給されない。障害者自身に申請してもらえるので、市町村は各障害者が必要としている支援が分かる。必要な支援はその時々によって変わるが、必要に応じて各障害者が申請するので、その変化にも対応できる。市町村の認定が適切であれば過不足の無い保障が可能である。
 「[6] 利用状況確認」と「[7] 利用状況報告」は不正を防ぐために必要かもしれない。また、事業者の提供しているサービスが適切であるかどうかを確認するためにも必要だろう。

 さて、事業者が提供する各サービスの利用料は事業者が決めるべきだろうか。それとも国や都道府県や市町村が決めるべきだろうか。事業者を選ぶのは利用者である。前者であれば利用料の差による事業者の競争が起こり低価格化が進むかもしれない。後者であればサービス内容の差による事業者の競争が起こりサービスが向上するかもしれない。どちらも望ましいが、支援費の決定方法が大きく異なる。後者であれば、利用者が求めるサービスが分かれば支給額が自動的に決まるが、前者の場合は、サービスが分かってもそのサービスの利用料が定まっていないので支給額も定まらない。利用者がサービス利用料の低い事業者を選択するとは限らないので、低価格化が進む競争は起こらず高価格化が進む可能性もある。そこで、前者の場合は、市町村はサービス利用料の平均値などを参考にして妥当な支援費を決める必要があるかもしれない。利用者は支給された支援費の総額内で各サービスの各事業者を選択することになる。例えば、A、B、Cのサービスを利用し、総額が5万円の場合、「A:1万円、B:2万円、C:2万円」になるように事業者を選んでも良いし、「A:2万円、B:1万円、C:2万円」になるように事業者を選んでも良い。

 今回も、外出時の介助など所謂健常者は必要としないような特殊な支援に関する話で、所謂健常者にも必要な食費などの生活費の保障に関しては述べなかった。その生活費は自分で働いて稼ぐことが基本であるが、障害者の場合は所謂健常者のように働けない場合が多い。その場合の所得保障も必要である。現在の制度の中では障害年金がその中心で、その他の制度を活用しても足りない場合に最後の手段として生活保護制度が利用されているものと思われる。しかし、現状では保障が必要なのに保障されていない障害者がいるだろう。その改善も必要である。

 以下は障害者自立支援法案に関するこれまでの私のブログ内の記事

  【応益負担と所得保障】
  【社会保障問題を選挙の争点に】
  【障害者が望む「自立」とは】
  【「限られた財源」強調の厚労相】
  【働いたらお金が減る人たち】
  【応益負担で前向き?】
  【財務省様の仰せの通りに?】
  【やっと与党とのパイプができた?】
  【障害者自立支援法案:可決】
  【障害者自立支援法案:委員名簿】
  【障害者自立支援法案:八代議員】
  【応益負担の理念図】
  【障害者自立支援法案:脅し?】
  【障害者自立支援法案:強行採決?】
  【障害者自立支援法案:与党修正案】
  【厚生労働委員会の様子】
  【32条は大切2】
  【応益負担に賛成なのね?】
  【朝日新聞と厚労省】
  【32条は大切】
  【その公平は本当に公平?】
  【「自立」とは自分で決めること】


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