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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

就労と所得保障

『障害者白書 平成17年版 第2編 第4章 第1節 3.経済的自立の支援』を読んで
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h17hakusho/zenbun/html/zenbun/honpen/chap02_04_01_03.html
次の部分

(1)年金制度等による所得保障
 障害のある人に対する所得保障は、障害のある人の経済的自立を図る上で極めて重要な役割を果たしており、我が国においては、障害基礎年金や障害厚生(共済)年金の制度と、障害による特別の負担に着目し、その負担の軽減を図るために支給される各種手当制度がある。
(障害者白書 平成17年版)

 障害者の所得保障の仕組みは障害年金が中心になっているようである。障害者白書には次のような資料もある。

・図表3-2-15 障害者の所得保障等の制度の沿革(障害者白書 平成17年版)
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h17hakusho/zenbun/html/zenbun/honpen/fig03_02_15.html

 外出時の介助など所謂健常者が必要としないような特殊な支援の保障に関しては、どのような理念で仕組みを作るべきかイメージが浮かびやすく、『応益負担と所得保障』『支援費制度と所得保障』などで述べてきた。しかし、所謂健常者にも必要な食費などの生活費の保障に関しては理念や仕組みのイメージが浮かびにくく、考えてみたがよく分からなかった。

 ネットで検索したら、日本障害者協議会のサイトに所得保障に関しての次のページがあった。

・所得保障に関する特別委員会「提言」案
http://www.jdnet.gr.jp/Proposal/Syotoku-teigen-an.htm

 この中に次のように書いてある。

「社会的自立」が実現し、「社会参加型の生活ができる所得の保障」の水準は、国が定めた最低生活費である生活保護基準(1類+2類+「障害者加算」)を参考にするが、「障害者加算」については障害による生活費の膨張と、社会参加のための費用などを科学的に算出したものとすること
(日本障害者協議会「所得保障に関する特別委員会「提言」案」)
http://www.jdnet.gr.jp/Proposal/Syotoku-teigen-an.htm

 この「水準」と所得保障との関係が分かりにくい。『障害による生活費の膨張と、社会参加のための費用など』に相当する部分は『応益負担と所得保障』『支援費制度と所得保障』などで述べた仕組みで良いと思われる。問題は生活保護の『1類+2類』の部分である。これが所謂健常者にも必要な食費などの生活費に相当する部分である。「基準生活費」と呼ぶこともあるらしい。生活保護制度は世帯単位であるが、ここでは個人単位で考える。

 生活費は自分で働いて稼ぐことが基本である。しかし障害者の場合は所謂健常者のように働けない場合が多い。その場合の所得保障が必要である。少しごちゃごちゃしているが、次の図を使って考える。

労働時間と仕事量(給料)
図1 労働時間と仕事量(給料)

 横軸は労働時間で縦軸は仕事の量である。正確には比例関係ではないが、労働時間が増えるに連れて仕事の量(成果)が増えることを比例関係のように表現した。所謂健常者でも労働時間が同じなのに仕事の量が異なる(グラフの傾きが異なる)ことがあるが、ここでは代表して1本のグラフで表した。障害者のグラフも同様である。また、職場環境の整備などにより障害者も所謂健常者と同じ量の仕事をこなせる場合もあるし、専門知識を持った障害者の場合は専門知識を持たない所謂健常者以上の成果をあげることもある。したがって、何よりも職場の環境整備などが必要である。それでも所謂健常者のように働けない障害者がいるだろうし、障害者が働きにくい職場が多いだろう。その状態をグラフで表した。また、縦軸の仕事量は給料に対応していると考えて良いだろう。

 所謂健常者(A)がt2の労働時間でw2の量の仕事をするのに対して、障害があるために同じ労働時間t2でw1の量の仕事しかできない人(B)がいたとする。この場合、所得保障はw2に相当する給料からw1に相当する給料を引いた額が望ましいと思われる。労働時間が増えるに連れて所謂健常者との差が広がるので、保障する額も増える。
 問題は図1におけるグラフの傾きが分からないことである。障害が原因で少なくなっている仕事量が分からないことである。そこで、収入が生活保護の基準生活費(グラフではw0に相当する額)に達するように保障する案が考えられ、少なくともそれだけの保障は必要である。しかし、そうすると、労働時間によらず総収入が一定になってしまう。例えば、Bの人はt2まで働いてもt1まで働いても総収入は変わらず、w0に相当する収入になる。全く働かなくてもw0に相当する収入になる。生活費のために働いている場合は労働意欲が減少し、労働時間が減れば政府の負担も大きくなる。生活保護制度の問題点と同じである。
 Aの人と同じ効率で働けるが障害があるためにt1の時間しか働けない人(C)の場合は、労働基準法で定められた労働時間での給料に達する額を保障する案が考えられる。例えばグラフのt2が労働基準法で定められた労働時間であればw2に相当する給料からw1に相当する給料を引いた額を保障すれば良いと思われる。
 問題は、障害が原因で少なくなっている労働時間が分からないことである。Cの人の総収入は労働時間t1によらず一定になる。政府の負担はt1を小さく見積もるほど大きくなる。t1を大きく見積もったとしても生活保護の基準生活費(グラフではw0に相当する額)に達する額は保障しなければいけないが、Bの場合と同様に、生活費のために働いている場合は労働意欲が減少し、労働時間が減れば政府の負担も大きくなる。
 全く働けない人の場合は、基準生活費に相当する額を保障しなければいけない。

 このように考えると、労働の際に障害があるために生じている所謂健常者との差を埋めるための所得保障の仕組みは非常に難しいように思われる。結局は労働の有無や労働時間によらず生活保護の基準生活費に達するように保障することになりそうである。まずは障害年金や各種手当を支給し、それで基準生活費に達しなければ生活保護で保障する。障害年金などで基準生活費を越えた場合は、それ以上は支給しない。既存の制度の理念はそのようになっていると思われるが、現実が理念通りになっていないのなら、理念通りに保障することが必要だろう。既存の仕組みで良いとは思えないので、改善できるなら改善した方が良い。

 障害者自立支援法案で応益負担を導入するのなら所得保障とセットで、という意見を聞くと、所謂健常者と同じ所得が保障されれば十分であるように思われそうである。障害があるために所謂健常者のように働けない場合は、今回の記事で述べたような所得保障は必要である。しかし、それが保障されれば十分というわけではない。『応益負担と所得保障』『支援費制度と所得保障』などで述べたように、『障害による生活費の膨張と、社会参加のための費用など』も保障する必要がある。例えば、所謂健常者も必要とするような最低限度の生活のために10万円あったとしても、障害があるために4万円の経費が必要だとしたら、実質的な生活費は6万円に減ってしまい、それでは生活できない。その場合は最低限度の生活のために14万円必要である。障害者の場合は外出時の介助など所謂健常者が必要としないような特殊な支援が必要である。その支援を受けるための保障を加えて初めて、障害者は所謂健常者と実質的に同水準の生活が保障される。そのことを忘れてはいけない。

 以下は障害者自立支援法案に関するこれまでの私のブログ内の記事

  【支援費制度と所得保障】
  【応益負担と所得保障】
  【社会保障問題を選挙の争点に】
  【障害者が望む「自立」とは】
  【「限られた財源」強調の厚労相】
  【働いたらお金が減る人たち】
  【応益負担で前向き?】
  【財務省様の仰せの通りに?】
  【やっと与党とのパイプができた?】
  【障害者自立支援法案:可決】
  【障害者自立支援法案:委員名簿】
  【障害者自立支援法案:八代議員】
  【応益負担の理念図】
  【障害者自立支援法案:脅し?】
  【障害者自立支援法案:強行採決?】
  【障害者自立支援法案:与党修正案】
  【厚生労働委員会の様子】
  【32条は大切2】
  【応益負担に賛成なのね?】
  【朝日新聞と厚労省】
  【32条は大切】
  【その公平は本当に公平?】
  【「自立」とは自分で決めること】


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