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【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

混合診療:日医の詭弁に反論1

『混合診療ってなに?〜混合診療の意味するものと危険性〜』を読んで

 2007/11/7の東京地裁の判決(参照)をきっかけにして混合診療が注目されている。混合診療(保険診療と保険外診療の併用)を解禁すべきか否かという争点だが、「混合診療を解禁」という表現が分かりにくい。既に混合診療は行われているからだ。問題なのは、保険外診療(所謂「自由診療」)を併用すると保険診療に相当する治療についても患者が全額負担することになっている点である。私には変に思えるのだが、厚労省と日本医師会が容認している。厚労省や日本医師会の「混合診療の解禁に反対」とは事実上「保険外診療をしたら保険診療分も患者が全額負担すべき」ということである。私は「保険外診療をしたら保険診療分も患者が全額負担すべき」という意見には賛成できない。
 混合診療の解禁に先頭に立って反対しているのは日本医師会のような気がするので、日本医師会が混合診療を解説しているサイト(参照)の記述に対する反論を書いてみる。書いてあることに頷けたのなら反論を書かないのだが、「その論理は変でないか?」と思った記述があったので反論を書いてみることにした。
 ところで、上に『「混合診療の解禁に反対」とは事実上「保険外診療をしたら保険診療分も患者が全額負担すべき」ということである』と書いたが、「保険外併用療養費」という仕組みがあって(参照:社保庁のサイト読売新聞の記事)、「保険外診療をしても保険診療分は一部負担で良い」という場合がある。また、「保険診療における医薬品の取扱いについて」という厚労省の通知文(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局長通知(社会保険診療報酬支払基金理事長宛))があって、医薬品の適応外使用(本来は保険外診療)でも、保険診療分と同様に一部負担で済む場合もあるらしい。最近では、「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」という通知((平成19年9月21日付け保医発第0921001号厚生労働省保険局医療課長通知))でリストが提供された。同じリストは「社会保険診療報酬支払基金」のサイト(審査情報提供事例)にある。このリストにない適応外使用でも保険診療と同様に一部負担になるのかどうかは調べてないので分からない。適応外使用で一部負担となる場合にレセプトにどのように記載されているかも未確認で分からない。とにかく、ややこしいので省略する。ここでは、それらの通知文の解釈と運用については無視する。「保険外併用療養費」の仕組みの範囲と問題点については余裕があったら書くかもしれないが、調べるのに苦労しそうなので、たぶん書かない。

 前置きが長くなった。これから『混合診療ってなに?〜混合診療の意味するものと危険性〜』の記述に対する反論を書く。

 まず、【混合診療ってなに?:混合診療ってなに?〜Q&A〜】の記載について。

Q1
最近、新聞報道などで、「混合診療」という言葉を目にしますが、混合診療とは何ですか?

日本の健康保険制度では、健康保険でみることができる診療(薬や材料も含みます)の範囲を限定しています。
混合診療とは、健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、範囲外の分を患者さん自身が費用を支払うことで、費用が混合することを言うのです。

 間違っていないと思うが、ここに描かれている「混合診療」の図を見ると、保険診療分(健康保険の範囲内の分)も一部負担で済むように勘違いしてしまう。実際は次の通りである。

通常の保険診療
保険診療に相当する治療
   
保険者(政府、健康保険組合)の支払い
7割
患者の自己負担
3割

保険外診療(自由診療)を併用した場合(所謂「混合診療」)
[厚労省と日本医師会の意見=現状]
保険診療に相当する治療 保険外診療
     
患者の自己負担
10割(全額)

保険外診療(自由診療)を併用した場合(所謂「混合診療」)
[東京地裁の法解釈と私(正己)の意見]
保険診療に相当する治療 保険外診療
     
保険者(政府、健康保険組合)の支払い
保険診療分の7割
患者の自己負担
保険診療分の3割
患者の負担
全額

 保険診療分(健康保険の範囲内の分)は一部負担ではなく全額を請求される。「混合診療」の定義の問題であるが…。

Q2
いまは「混合診療」が認められていないのですか?

日本では、健康保険の医療に関する価格を厚生労働大臣が決めています。
そして、健康保険の範囲内の診療と範囲を超えた診療が同時に行われた場合でも、平等な医療を提供するために、範囲外の診療に関する費用を患者さんから徴収することを禁止しています。
もし、患者さんから費用を別途徴収した場合は、その疾病に関する一連の診療の費用は、初診に遡って「自由診療」として全額患者さん負担となるルールになっています
一連の医療サービスの中で、例外として患者さんから別途費用徴収を行うことが認められているのは、差額ベッド(入院した時の個室代)や新しい高度な医療技術などのごく一部です。

 「平等な医療を提供するために」とあるが、上記の図を見れば分かるように、保険外診療を併用した人に保険診療分も全額負担させることで、その全額負担に耐えられる人しか保険外診療を受けられなくなっている。平等ではない。もしも、東京地裁の法解釈のように運用していれば保険外診療を併用した場合に自己負担分が減り、今よりも多くの人が保険外診療を受けられるようになる。
 一部負担で済む「ごく一部」の保険外診療は上記の「保険外併用療養費」(参照:社保庁のサイト読売新聞の記事)のことだろう。「ごく一部」しかないのなら「保険外併用療養費」に期待しても無駄だし、日本医師会は「保険外併用療養費」に相当する治療を増やしたくないのだろうと推察できる。

Q3
差額ベッドなどの例外を増やすことによって混合診療が認められれば、保険外の診療を行っても全額自費にならなくて済むのではないでしょうか。その方が患者さんにとっては便利なのでは?

一見、便利にみえますが、混合診療には、いくつかの重大な問題が隠されています。例えば、次のようなことです。

(1)政府は、財政難を理由に、保険の給付範囲を見直そうとしています。混合診療を認めることによって、現在健康保険でみている療養までも、「保険外」とする可能性があります。
(2)混合診療が導入された場合、保険外の診療の費用は患者さんの負担となり、お金のある人とない人の間で、不公平が生じます。
(3)医療は、患者さんの健康や命という、もっとも大切な財産を扱うものです。お金の有無で区別すべきものではありません。「保険外」としてとり扱われる診療の内容によっては、お金のあるなしで必要な医療が受けられなくなることになりかねません。

混合診療の背景には、このような問題が潜んでいます。

 (1)は「現在健康保険でみている療養」を「保険外」にしなければ良いだけである。国民が「保険外」にすることを望めば仕方ないが、そうでないのなら、厚労省が国民(代表は国会)を無視して「保険外」にすることは許されないだろう。現状は無視しているだろうが、要するに「現在健康保険でみている療養」が「保険外」にならないように日本医師会も働きかければ良いし、現在は「保険外」となっている診療も「保険内」となるように働きかれれば良いのである。その働きかけは今でも行っているだろうから続ければ良く、混合診療の問題とは別である。
 (2)はQ2でも書いたが、現状は保険外の診療を併用することにより、保険内の診療分まで全額負担することになっていて「お金のある人とない人の間で、不公平が生じ」ている。改善すべきだろう。
 (3)は「必要な医療」ならば「保険内」にすれば良く、日本医師会もそのように働きかけているはずである。混合診療の問題とは別である。

Q4
さきほどの回答の中に、「保険外の診療の内容によっては」という言葉が出てきましたが、例えば保険で認められていない薬があって、その薬が安全で有効なものなら、患者さんもお医者さんも使えるように、混合診療として認めたほうがよいのでは?

もし、安全で有効なことが客観的に証明されている薬ならば、保険外ではなく健康保険で使えるようにすれば、すべての患者さんが公平にその恩恵を被ることができます。
つまり、時間をかけずに、速やかに保険で使えるようなルールをつくれば済むことです。

 「保険外ではなく健康保険で使えるようにすれば」良いのは、その通りである。しかし、現状ではそうなっていない。保険外であるために保険内の診療までも全額負担しなければいけなくなっている。混合診療で保険内の分を一部負担にした方が負担が軽くて済み、そちらの方が良い。
 「時間をかけずに、速やかに保険で使えるようなルール」を作ることには賛成だが、現状は「速やかに」となっていない。また、ルールが作られたとして「速やかに」がどの程度の日数なのか分からないが、すぐにでも治療してほしい患者に待たせることが「医者」のすることだろうか? 「保険で使える」ようになるまでの間に保険外の治療をしやすくするためには、混合診療で保険内の診療分を一部負担にした方が良い。

Q5
それでも、保険で適用されなかった場合に、その薬が使いたいのであれば、混合診療として認めたほうがよいのでは?

まず、いまの薬の承認制度が、必ずしも判断基準が明らかでないことや、審査・承認までの期間が長すぎるという根本的な問題があります。製造や輸入の承認や健康保険適用の判断基準を明確にして、審議や結果をオープンにすることが必要です。
そのうえで保険適用されなかった薬は、有効性や安全性等の問題が指摘されたものと考えられます。
このような薬の使用を混合診療として保険外で認めれば、結果的に使用を促進し、重大な健康被害等が全国に拡大するおそれがあります。保険外であっても、安易に認めるべきではありません。

 「製造や輸入の承認や健康保険適用の判断基準を明確にして、審議や結果をオープンにすること」には賛成である。しかし、現状はそうなっていないし、現在「保険適用されなかった薬」は「有効性や安全性等の問題が指摘されたもの」とは限らない。今の仕組みでは、有効で安全な薬さえも使いにくくなっている。保険診療分を全額負担できる人しか使えなくなっている。そして、安全で有効な薬が「結果的に使用を」抑制されていて、救える命が救えなくなっているのではないか? 「有効性や安全性等の問題が指摘された」薬については医師が患者に説明し使用しなければ良く、医師と患者の関係の問題である。患者には「有効性や安全性等の問題が指摘された」薬を選択する自由もあるが、それは別問題。現在、保険外診療を併用することで保険内診療分も全額負担になる仕組みのために、有効で安全な薬が使いにくくなっている問題の方が重要で緊急性がある。

Q6
使用数が保険で制限されている材料があると聞きます。ひとによって、多くの材料が必要な場合は、制限を超えた分は患者さんの実費でみれば、全額患者さん負担よりは納得感があるのでは?

医療は、同じ病気であっても、患者さんの年齢や体力、ほかの病気の有無などによって、個別の対応が必要です。その患者さんに一番合った治療方法が選択されるべきです。
したがって、患者さんによっては、保険で制限されている数以上の材料が必要な場合もあります。このような場合は、患者さんの容態を客観的に判断し、医学的に必要な場合は保険でみるようにすればよいのです。
医療を「平均」で扱うのではなく、患者さんの「個別性」を加味することが必要です。

 日本医師会のAはQ6の答になっていないのだが、「個別の対応が必要」には賛成である。そして、「医学的に必要な場合は保険でみるように」することにも賛成である。しかし、現状はそうなっていない。「制限を超えた分」を使えば、制限を超えなかった分まで全額負担することになっているはずである。すなわち、制限があるために必要な量を使えずに治療に支障を来している(医者が上手に誤魔化している可能性もある)はずである。「使用数が保険で制限されている」状態では、オーバーした分だけを全額負担した方が良い。オーバーしてない分も全額負担することになっている今の仕組みは改めるべきである。(追記:2004/12/15の『いわゆる「混合診療」問題に係る基本的合意』に基づき「制限回数を超える医療行為」との混合診療が可能になっている。現在の「保険外併用療養費」(参照:社保庁のサイト読売新聞の記事))

Q7
混合診療に問題があるとしながらも、現に差額ベッドなどは認められています。これらは今後どのようにすべきですか?

現在の制度の中で認められている混合診療(特定療養費と言います)は、(1)新しく高度な診断や治療で普及度が低い医療技術を指す「高度先進医療」、(2)入院時の個室や予約診察など、どちらかというと患者さんのアメニティ(快適性)に関わる「選定療養」、の2つに大別されます。
まず、高度先進医療は、有効性や普遍性が認められるものは、すべて保険適用するのが筋です。そして、より多くの患者さんが高度の医療を保険で受けられるようにすべきです。
差額ベッドなどのアメニティに関するものは、そもそも診療行為ではありません。したがって、その部分で患者さんから費用を徴収しても「混合診療」には該当しないと整理すべきです。

 「特定療養費」は改められて「保険外併用療養費」(参照:社保庁のサイト読売新聞の記事)となっている。
 「高度先進医療は、有効性や普遍性が認められるものは、すべて保険適用する」ことには賛成である。しかし現状はそうなっていない。保険適用になるまで今の患者を待たせることは医者のすることではないだろう。混合診療で保険診療分も一部負担にして少しでも患者の負担を減らした方が良い。

 とりあえず、【混合診療ってなに?:混合診療ってなに?〜Q&A〜】の記載に対する反論を書き終えた。急いで書いたので書き忘れていることがあるかもしれない。その場合は追記する。
 その他の【こんなケースはどうすべき?】【日本医師会はこう考えています】の記載に対する反論は後で別のエントリーにして書く。このエントリーに書いた反論と重複するかもしれないが…。

続き:【混合診療:日医の詭弁に反論2】


タグ:混合診療
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