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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

混合診療:日医の詭弁に反論2

『混合診療ってなに?〜混合診療の意味するものと危険性〜』を読んで

 【混合診療:日医の詭弁に反論1】の続きである。引き続き、『混合診療ってなに?〜混合診療の意味するものと危険性〜』に書いてあることに対する反論を書く。

 【混合診療ってなに?:混合診療ってなに?〜Q&A〜】に書いてある日本医師会のAに対する反論は【混合診療:日医の詭弁に反論1】に書いた。次に【こんなケースはどうすべき?】に書いてある「日本医師会の考え方」に対する反論を書く。

【ケース1】
具体例(想定ケース)
薬Aは、肺炎の薬として承認されているが、薬の成分や作用からみると、ある一定の他の病気にも効くことが明らかである。このような場合は、他の病気のときも自費で使えるようにしたら?
日本医師会の考え方
薬の成分、作用から他の病気にも有効であり、安全性も客観的に証明されるものであれば、速やかに健康保険で他の病気にも使えるようにするのが筋。そうすれば、多くの患者さんが助かります。

 これは医薬品の「適応外使用」に関する考え方である。「速やかに健康保険で他の病気にも使えるように」すれば多くの患者にとって良いことだろう。しかし、現状は「速やかに健康保険で他の病気にも使えるように」なっていない。「健康保険で他の病気にも使えるように」なるまで待つように患者に言って諦めされるべきだろうか? 「健康保険で他の病気にも使えるように」なるまでは混合診療で保険診療分も一部負担で済むようにした方が患者の治療にとって有益だろう。また、混合診療で保険診療分を一部負担にしたとしても、該当する薬を「健康保険で他の病気にも使えるように」できるので、「速やかに健康保険で他の病気にも使えるように」することは混合診療の問題とは別の問題

【ケース2】
具体例(想定ケース)
手術のときに、切った部分を縫合する機器(自動縫合器)を使って縫った場合、手術によって、例えば2個までとか4個までしか健康保険では認められていない。傷口の状況により、もっと多く使う必要がある場合、数を超えた分は自費で料金をとれるようにしたら?
日本医師会の考え方
患者さんの状態によって、多く使う必要がある場合は、個別に健康保険で認めるべき。病気やけがに対する治療は、患者さんの年齢や体力などによっても異なるので、個別に対応すべき。

 「個別に健康保険で認めるべき」なのは賛成である。しかし現状ではそうなっていない。「数を超えた分」を使用すれば保険診療分も初診に遡って全額負担することになるので、事実上「数を超えた分」は使えない。混合診療で保険診療分を一部負担にすれば、「数を超えた分」を使えるようになる。また、混合診療で「数を超えた分は自費で料金をとれるように」しても、後に「個別に健康保険で認め」られるようにすることはできる。「個別に健康保険で認め」られるようになるまで、「数を超えた分」を使用しない(事実上「保険診療分も全額負担できる人」にしか使用できない)のは治療法として不適切だろう。(追記:2004/12/15の『いわゆる「混合診療」問題に係る基本的合意』に基づき「制限回数を超える医療行為」との混合診療が可能になっている。現在の「保険外併用療養費」(参照:社保庁のサイト読売新聞の記事))

【ケース3】
具体例(想定ケース)
胃のピロリ菌を除去する療法は、2回までしか健康保険で認められていない。3回目以降は自費で行えるようにしたら?
日本医師会の考え方
大多数のケースでは2回で菌を除去できるとしても、医学的に3回目以降も必要であれば、患者さんの特性に応じて、その分も健康保険で給付すべき。

 「患者さんの特性に応じて、その分も健康保険で給付すべき」なのは賛成である。しかし現状ではそうなっていない。3回以上行えば保険診療分も初診に遡って全額負担することになるので、事実上「2回までしか」は行えない。混合診療で保険診療分を一部負担にすれば、「3回目以降も」行えるようになる。また、混合診療で「3回目以降も」自費で行えるようにしても、後に「患者さんの特性に応じて、その分も健康保険で給付」できる仕組みに帰ることはできる。「患者さんの特性に応じて、その分も健康保険で給付」できるようになるまで、「3回目以降」は行わない(事実上「保険診療分も全額負担できる人」しか行えない)のは治療法として不適切だろう。(追記:2004/12/15の『いわゆる「混合診療」問題に係る基本的合意』に基づき「制限回数を超える医療行為」との混合診療が可能になっている。現在の「保険外併用療養費」(参照:社保庁のサイト読売新聞の記事))

 次に【日本医師会はこう考えています】に記載されていることに対する反論を書く。

社会保障を充実させることは、国の社会的使命であることが日本国憲法にも規定されています。国が果たすべき責任を放棄し、お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあってはなりません。

 今は、混合診療で保険診療分も全額負担することになっているため、保険診療分を全額負担できるだけが保険外診療を含めた適切な医療を受けられるようになっている。すなわち、混合診療で保険診療分も全額負担することになっているため、「お金の有無で健康や生命が左右されるようなこと」になっている。改善すべきだろう。

医療が、国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強く持つものだからこそ、すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境でなければなりません。

 今は、混合診療で保険診療分も全額負担することになっているため、保険診療分を全額負担できるだけが保険外診療を含めた「より良い医療」を受けられるようになっている。すなわち、混合診療で保険診療分も全額負担することになっているため、「すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境」になっていない。改善すべきだろう。

健康保険の範囲内の医療では満足できず、さらにお金を払って、もっと違う医療を受けたいというひとは確かにいるかもしれません。しかし、「より良い医療を受けたい」という願いは、「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきです。

 この主張には呆れた。保険外診療を求めている人を責めている。保険外診療を求めている人たちも、「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供されるべきだ」と思っているだろう。しかし、現状では、保険外診療を併用すると保険診療分も初診に遡って全額負担することになっている。その結果、保険診療分も初診に遡って全額負担できる人だけが保険外診療を受けられるようになっている。「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供される」ためには、今の保険外診療を併用すると保険診療分も初診に遡って全額負担することになっている状態よりは、保険外診療を併用しても保険診療分は一部負担で済むようにした方が良い。保険外診療を求めている人たちは、そのように考えているのではないだろうか。

混合診療の問題を語るときには、「自分だけが満足したい」という発想ではなく、常に「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければならないと考えます。

 この主張には呆れた。保険外診療を求めている人を責めている。保険外診療を求めている人たちが「自分だけが満足したい」と考えているかのような主張である。「社会としてどうあるべきか」という視点で、保険外診療を併用することで保険診療分も初診に遡って全額負担することになっている今の仕組みを改めたいのではないだろうか。

混合診療は、このような考え方に真っ向から対立するものだからこそ、私たちは強く反対するのです。

 混合診療(保険診療と保険外診療の併用)で保険診療分も初診に遡って全額負担することになっている現状を容認することの方が、「このような考え方に真っ向から対立するもの」だろう。

 これで、『混合診療ってなに?〜混合診療の意味するものと危険性〜』に書いてあることに対する反論は終わった。

 次に別のエントリーで【いわゆる混合診療に係る東京地裁判決への日本医師会の見解】に対する反論を書いてみたい。東京地裁の判決文を読み直さないといけないかもしれないので、いつになるかは分からないが…。

追記(2007/12/17):
 「<混合診療>全面解禁見送りで合意」(毎日新聞 12月17日18時52分配信)を知って、続きを書く気が失せた。
 【原告の清郷伸人さんのサイト】を見て、【「混合診療」禁止は違法(東京地裁判決) - 元検弁護士のつぶやき】のコメント欄を読んで勉強して、【保険医療機関及び保険医療養担当規則】を読んで、【健康保険法】を今読んでいて、一度読んだのだけど2007/11/7の東京地裁の判決(参照)をもう一度読もうと思っていて、その後に別のエントリーで続きを書こうと思っていたのだけど、書く気が失せた。
 もしかしたら、待っていた人がいたかもしれませんが、ごめんなさい。m(_ _)m
 またマスコミなどで話題になって混合診療が可能になる可能性が見えてきたら書くかもしれません。
 今は、私の【独り言】の2007年12月13日の所に書いた図を載せて、この話題は終わりにします。

厚労省と日本医師会は患者から混合診療(c)の選択肢を奪った!
混合診療(c)の選択肢を取り戻そう!
(a)通常の保険診療
保険診療に相当する治療
   
保険者(政府、健康保険組合)の支払い
7割
患者の自己負担
3割
(b)保険外診療(自由診療)を併用した場合(現状)
[厚労省と日本医師会の意見(「混合診療」禁止)]
(こちらは「混合診療」と呼ばず、単なる「自由診療」らしい。)
保険診療に相当する治療 保険外診療
     
患者の自己負担
10割(全額)
(c)保険外診療(自由診療)を併用した場合(所謂「混合診療」)
[東京地裁の法解釈]
(こちらが「混合診療」の本当の定義らしい。)
保険診療に相当する治療 保険外診療
     
保険者(政府、健康保険組合)の支払い
保険診療分の7割
患者の自己負担
保険診療分の3割
患者の負担
全額

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かいきん

混合診療解禁いいですねえ!
いままで厚生労働省に頭を下げて安い薬価で売らなければならなかった製薬企業は、もう保険申請なんて手間も無く好きに薬価を設定できて万々歳です。
保険適用しなければ患者が救われないと厚生労働省に脅されていた財務省も、混合診療解禁になれば福祉財源削り放題で万々歳です。
民間保険も超成長市場が出現してうはうは万々歳です。
今まで自腹を切ってこっそり患者に保険外診療を行っていた大病院も、堂々と患者に請求できるようになり万々歳です。
活性化自己リンパ球移入療法のように、効果が実証されず指定を取り消された(一旦は保険に入ったんですよ)怪しげな療法や、癌に効くキノコも(山○内なんて製薬会社のつくるアガリクスとかいって売ってましたね)堂々と病院で行われるようになってウハウハですね。
そして製薬会社や保険会社の後押しを受けて、混合診療解禁を要求していたアメリカもにっこり大満足です。
by かいきん (2007-12-10 14:37)

正己

かいきんさん、コメントありがとうございます。
保険外診療を併用しても保険診療分が全額負担にならないようになったとしても、私はできるだけ保険診療だけで済ませたいです。安い方が良いですから。例えば同じ効能の薬があったとしたら、保険外で全額支払わなければいけない薬よりも、保険内で一部負担で済む薬の方を選択します。各企業もそのような消費者心理を考慮して対処するのではないかと思われます。
by 正己 (2007-12-10 15:53)

かいきん

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/13445.html;jsessionid=BACE0F37D301BE3DAE3BF0C8CF99257A
財界の人は混合診療で市場が膨らみ100兆円になると試算しています。

ちなみに今でも整腸剤でよく効く薬が保険外で売られていたりします。とてもよく便秘に効くので、試供品を使った患者さんは自費で薬局で購入しています。まあ、貧乏な方は保険内の薬が体に合うことを祈ってもらうということで。
by かいきん (2007-12-10 18:06)

かいきん

まあ、医師会(厚生労働省もそうですが)の論点は、エグイ話を出さずに上っ面のみで反論しているので隔靴掻痒の感はあります。

それでも、混合診療が解禁されたらそれは国民が自ら望んだことで、医師会は反対していたのだから、何が起こっても自業自得ということだけは自覚しておいていただきたいと思います。
by かいきん (2007-12-10 18:38)

正己

かいきんさん、引き続きコメント、ありがとうございました。
by 正己 (2007-12-10 19:33)

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