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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

ジンバルドー実験:匿名で攻撃的に

 昨日(2008/6/14)のアクセス解析を見たら【アッシュの実験:同調しちゃう】に訪問者数4のアクセスがあり、以前にも何度かアクセス解析の結果に登場したように思う。これまでの閲覧数も2千を超えていて、私の記事の中では多い方である。

 「アッシュの実験」のキーワードは「同調」であり、間違った意見であっても多数派に同調してしまう人が多いという怖い結果が示された実験だった。しかし、引用した本「心理おもしろ実験ノート」(渋谷昌三著、三笠書房「知的生きかた文庫」)には同調しない人が増える条件についても書いてある。【アッシュの実験:同調しちゃう】でも触れたが、本から引用する。

 アッシュの実験では、お互いの顔を見ることができる状況になっていました。もし、お互いの顔が見えない状況で実験をしたら、同調率はどうなるでしょうか。
 実験の方法はまったく同じにして、グループのメンバー同士の顔も見えないし、お互いに話もできないような場面をつくります。パネル上のボタンを押すことで自分の判断を答えるようになっており、他の人の判断はパネル上のランプで知るようになっています。実験の結果、お互いに顔をつきあわせない状況では、同調が著しく減少したのです。また、六人のサクラのうち一人は別の答えをするようにしても、やはり同調率が低下しました。つまり、被験者の自主性が回復し多数派の意見に引きずられなくなったわけです。
 以上の実験は、お互いに知らない人同士のグループでの同調を調べるものでした。
(渋谷昌三著「心理おもしろ実験ノート」三笠書房、103ページ)

 これを読んだ時に匿名性のメリットだと思った。また、少数派の意見表明が重要であることも示されている。

 匿名性のデメリットを示した実験もある。フィリップ・G・ジンバルドーさんによる匿名性と攻撃行動との関係を調べた実験であるが、ネット上で探したら『スタンフォード監獄実験』が有名で、私が知りたい実験を詳細に載せているサイトは見つけられなかった。一つだけ紹介できそうなサイトを見つけたが、プライベートな日記のようなブログだったのでリンクは張らない。代わりに、また「心理おもしろ実験ノート」(渋谷昌三著、三笠書房「知的生きかた文庫」)から引用する。実験方法の紹介は再現性の観点から詳細な方が良いので、引用が長くなるがご容赦願いたい。

 一グループ四人の女子大生は、他人の気持ちにどれだけ共感できるかを調べるための実験に参加します。もちろん、これは表向きの目的なのです。実験を始めるに当たって、お互いに顔の表情がわかってしまうと実験に影響が出てしまうからと説明し、目と口のところにだけ小さな穴の開いた袋のような実験衣を着せてしまいます。
 女子大生の被験者のうち、半数は、この状態で実験に参加します。この状態は、誰が誰だか絶対にわかりませんので、没個性化の状況と呼びます。残りの半数は、この服装をして、さらに胸に大きな名札をつけます。この状況は、お互いの名前がわかってしまうので、個性化の状況と呼びます。
 次に、実験者が以前に若い女性と面接したときの二種類のテープを、被験者たちに聞かせます。
 一つのテープには、とても良い印象を与える女性との会話が録音されています。この女性は、医学部に在学している兄の学費をつくるためにあるバイトをしているという人で、けなげで心がやさしく、とても感じが良いという印象を受けるように工夫されています。もう一つのテープには、とても不快な印象を与える女性との会話が録音されています。この女性は、モデルをしながらデートするためのおこづかいを稼いでいるという人で、自己中心的で、大いに気に障る人という印象を受けるように工夫されています。
 さらに次の段階では、一方透視窓の向こう側で実験者と話している若い女性を被験者に観察させ、その女性の気持ちを判断するよう求めます。
 その際、この女性は電気ショックを受ける実験のために来ている被験者であると伝えます。ついては、ちょうど良い所だから、電気ショックを与える役をやりながら、この女性の気持ちを判断して欲しいと頼みます。そこで、四人は別々のボックスに入り、合図のランプがついたらショックを与えるボタンを押し、止めの合図があるまで押しているように指示されます。
 電気ショックの実験を始める前に、「向こう側にいる女性の被験者は、さきほどテープに登場した人です」と伝えます。そこで、良い印象を与えた女性不快な印象を与えた女性が、それぞれ被験者として四人の前に現われます。
 実験が始まると、電気ショックを受けている女性が、身をよじったり、顔を歪めたりして、苦しそうにしている様子が見えてきます。電気ショックを与える役の被験者は、苦しそうな様子を見て、気の毒だと思えば、合図を無視してボタンを押すのをこっそり止めることができます。なぜならば、仲間の誰がボタンを押しているのかわからないようになっていたからです。実験者は、被験者が実際にボタンを押した回数とボタンを押していた時間を記録しました。
(渋谷昌三著「心理おもしろ実験ノート」三笠書房、106ページ)

 一部を強調表示させたもらった。「心理おもしろ実験ノート」(渋谷昌三著、三笠書房「知的生きかた文庫」)には実験結果のグラフが載っている。被験者がボタンを押し続けていた平均時間は、「良い印象を与えた女性」に対しても「不快な印象を与えた女性」に対しても「没個性化の状況」では0.8秒以上で実験の後半では上昇している。それに対し、「個性化の状況」では「不快な印象を与えた女性」では0.4秒くらいで実験の後半では0.5秒くらいまでしか上昇していない。「良い印象を与えた女性」に対しては、実験の前半では0.5秒くらいだが、実験の後半では0.4秒くらいまで減少している。「没個性化の状況」すなわち匿名状況の方が冷酷になれて、攻撃の相手が嫌な奴だと冷酷さが増すようである。
 ただ、この実験では、仲間の誰がボタンを押しているのかわからないようになっていたわけで、実験前には「個性化の状況」では名前が知られてしまったが、実検中は分からないはずである。一グループの仲間は4人という少人数だったので仲間の誰がボタンを押しているのかわからないようになっていたとしても「匿名」とは言えないのかもしれない。すなわち、お互いにメンバーの名前を知っている少人数のグループであれば、メンバーの誰の行為か分からない状態でも匿名状況で見られる冷酷さが抑えられるのかもしれない。

 ジンバルドー実験には続きがあって、ジョンソンさんとダウニングさんが実験用の衣装を2種類用意して似た実験を行っている。この実験については「心理おもしろ実験ノート」(渋谷昌三著、三笠書房「知的生きかた文庫」)に載っていないようなので「対人心理学トピックス100」(斉藤勇編、誠信書房)から引用する。

 ジョンソンとダウニングは、実験用の衣装として、悪名高き●●●団のガウンに似たものと人助けのイメージの強い看護婦のユニフォームとを用意し、被験者に着せている。六〇名の女子学生はこの一方の条件に、さらに各々半数ずつ匿名条件と、大きな名札を胸につける個性条件とに割り当てられた。
 実験者は被験者に対し、生理的な刺激が学習作業にどう影響するか知りたいので、学習実験の参加者が誤答するたびに電気ショックを与えなさいと指示する。被験者は、六段階のボタンのどれかを選んで押すのである。
(斉藤勇編「対人心理学トピックス100」誠信書房、184ページ)

 私が持っているのは旧版なので新装版で確認したわけではないので、載っていなくてもご容赦願いたい。また、何か問題が起こるといけないので、一部を伏せ字にした。
 実験結果は、看護婦の衣装では電気ショックを和らげたが●●●団の衣装では強い電気ショックを与えていたらしい。それで、コスチューム効果があったとする結論であるが、「没個性化の状況」だと衣装による差が広がったらしい。
 本には実験結果のグラフが示されていなかったので、看護婦の衣装の際に「個性化の状況」と「没個性化の状況」ではどちらが電気ショックが弱かったのか分からない。もしも「没個性化の状況」の方が電気ショックを和らげていたら匿名状況のメリットといえるかもしれないが、たぶん看護婦の衣装でも「没個性化の状況」の方が電気ショックがやや強く、●●●団の衣装で「没個性化の状況」と「個性化の状況」との差が大きかったので、「没個性化の状況」で衣装の差が大きくなったのだろう。
 匿名だと冷酷になれるが、衣装など他の影響もあるらしく、衣装も含めた自分の状況が行動に影響するのは『スタンフォード監獄実験』の通りだろう。

 さて、電気ショックを使った実験といえば、『ミルグラム実験』が有名である。嫌でも権威者の命令に従ってしまう現象を確認した実験であるが、この実験にも続きがある。また「心理おもしろ実験ノート」(渋谷昌三著、三笠書房「知的生きかた文庫」)から引用する。

 実験場面は前項で説明したものと同じなのですが、実験者(権威者)は実験が始まると同時に実験室から出て行ってしまいます。このような場面になると、実験者の命令に最後まで従った教師役の被験者の人数が三分の一(二二パーセント)にまで減少したのです。実験者が被験者から一メートルしか離れていなかった時には六五パーセントの人が命令に従ったわけですから、この実験の服従率がいかに低いかがよくわかります。
(渋谷昌三著「心理おもしろ実験ノート」三笠書房、168ページ)
 服従率の減少した別の実験があります。実験の方法は同じなのですが、この実験では、三人の被験者(実は二人は実験者側のサクラなのです)が教師役をします。他の実験と同じ手続きで実験が進行しますが、電気ショックが一五〇ボルトを越したところで、サクラの一人は、これ以上実験を続けたくないと言って、部屋の隅に逃げてしまいます。その後、電圧が二〇〇ボルトになった時、もう一人のサクラも実験を止めてしまいます。このような状況になった後も、実験者は被験者に実験を続けるよう命令し続けたのですが、一〇パーセントの人が服従したにすぎませんでした。
(渋谷昌三著「心理おもしろ実験ノート」三笠書房、169ページ)

 前者は権威者が傍にいなければ命令に逆らいやすくなるという結果で、後者は命令に従わない人が増えれば逆らいやすくなるという結果である。ただ、後者の実験は2人のサクラが逆らってしまい自分だけが残っている状況(しかも小数派)なので逆らえたのかもしれず、3人のサクラを用意して1人のサクラが最後まで従っていた場合にどうなるかが知りたい。あるいは、サクラをもっと多く用意して、命令に従っている方が多数派だった場合にどうなるかが知りたい。誰かが実験しているだろうとは思うが、ネット上で公開してくれないと、知るのは難しい。

 さて、「ミルグラム実験」では一部の人が命令に逆らうことで服従率が低下したが、「アッシュの実験」でも小数派の意見表明が多数派への同調率を下げた。また、「アッシュの実験」では見ず知らずの人で作られたグループでお互いに顔が見えない匿名のような状況であれば多数派に同調せずに自分の意見を貫きやすくなることが示され、「ジンバルドー実験」では匿名状況で攻撃性が増した。「ジョンソンとダウニングの実験」では匿名でも穏やかな衣装(攻撃に向かない状況)にすることで攻撃性を減少させることができた。
 文章が長くなりすぎて、何が言いたいか自分でも分かりにくくなったが、要するに、「多数派に流されずに自分の意見を表明できて、しかも穏やかで荒れない環境」を作りたければ、これらの実験結果を踏まえて考えた方が良いだろう、ということである。


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