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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

「味方の敵は敵」のままでは…

 十年以上前に読んだ本に書いてあったことで、どの本に書いてあったか忘れてしまったし、正確には思い出せないのだが次のようなことが書いてあった。

 新米カウンセラーの所にある親子がカウンセリングに来た。とりあえずカウンセラーは別々に話を聞くことにした。
 母親は「うちの息子は…」と息子の悪口を並べ、カウンセラーは「それは酷いですね」などと相槌を打ちながら話を聞いていた。息子の方も「母は…」と母親の悪口を並べ、カウンセラーは息子にも「それは酷いですね」などと相槌を打ちながら聞いていた。
 母親と息子の両方に面接室に入ってもらい、二人から話を聞くことにした。二人は別々に話していた時と同じように相手の悪口をカウンセラーに訴えて、カウンセラーは母親の方を向いては「うん、うん」と頷き、息子の方を向いては「うん、うん」と頷いた。
 その様子を見た母親と息子が同時に怒った。
 「あなたはどっちの味方なの?」

 よくある話だと思うし、親子ではなくて夫婦だったかもしれず、カウンセラーではなくて教師だったかもしれない。とにかく、そのような構図の話である。
 当時はカウンセラーの態度について勉強しながらも笑い話のように読んでいたのだが、今日はハイダーのバランス理論との関係で思い出した。

 ハイダーのバランス理論については、私のブログでも【敵の味方は敵】に書いた。当時は紹介できるリンクフリーのサイトが見つからなくて私のサイト【好悪感情のバランス理論】【1 世の中を見る目、人を見る目(1)バランス理論』(心理学総合案内こころの散歩道)】を紹介した。
 前者では「自分の友達二人の仲が悪い場合」が上のカウンセラーのケースと同じ構図である。後者では「子供にとって夫婦げんかはなぜ辛いか」が同じ構図だろう。引用する。

子供にとって夫婦げんかはなぜ辛いか

 私はお父さんが好き、私はお母さんも好き、そしてお父さんとお母さんはとても仲良し。それならばバランスがとれています。

 ところが、

 私はお父さんが好き、私はお母さんも好き、でも、お父さんとお母さんはとても仲が悪い。これでは、心のバランスがとれません。子供は、どちらの味方にもなれず、大好きな両親のけんかを心を痛めながら見るわけです。

 どちらか一方の味方になってしまえば、一応、心のバランスはとれます。たとえば、お母さんと2人でお父さんの悪口を言えばよいわけです。

 (社会心理学的なバランスはとれていますが、このような状態が長く続けば、また別の問題は出てくるでしょうが。)

「1 世の中を見る目、人を見る目(1)バランス理論」心理学総合案内こころの散歩道)

 板挟みは辛いものである。

 以前はハイダーのバランス理論を紹介するのに良いサイトを見つけられなかったのだが、今日は見つけた。
 【white clovers/社会心理学/ハイダーのバランス理論】には図があって分かりやすい。トップページへのリンクが切れていて、将来は消えてしまうサイトかもしれないので、早めに読んでほしい。
 念のため、消えてしまった場合の対策として、引用した「子供にとって夫婦げんかはなぜ辛いか」の解説のために、「認知者(P)、その他の人(O)、対象(X)」を「子、母、父」に変えて図を作った。

ハイダーのバランス理論(子の気持ち)

 子、母、父の三者にバランスが保たれているのは図1~図4の4ケースで、バランスが崩れているのは図5~図8の4ケースである。
 『私はお父さんが好き、私はお母さんも好き、でも、お父さんとお母さんはとても仲が悪い』は図5に相当する。バランスが崩れていて辛い。すると、子は図2か図3の状態に移りたくなる。『お母さんと2人でお父さんの悪口を言えば』は図2に相当する。

 しかし、子としては父と母に仲直りしてほしいだろう。では、子はどのような戦略を採るか。
 子と母の位置を逆にした図で考えてみる。

ハイダーのバランス理論(子の戦略)

 「母に好かれている子は父が好きだけど母は父が嫌いな状態」は図7bに相当する。これでは母はバランスが崩れていて辛いので態度を変えなければいけない。子が父を好きな状態が変わらなければ、母は図1bか図4bの状態に変えるしかない。図1bの状態に変えてくれれば、母も父が好きになり、子の作戦は成功である。しかし、リスクもある。母が図4bの状態に変えたとき、子は母に嫌われる。
 子が父を好きで居続けるのなら、母が父を好きにならないまま母に嫌われるリスクがあった。しかし、母に嫌われてもいいから父と母に仲直りしてほしい。母に父を好きになってほしいと思ったら、子は図3bの戦略を採るかもしれない。まずは父を嫌う。ただし、母に好かれたままでは図2bで安定してしまう。母にも嫌われなくてはいけない。そこで、母に嫌われるように行動する。これで図8bの状態になりバランスが崩れていて母は辛いので図3bに変えるかもしれない。母は父を好きになってくれるかもしれない。悲しい戦略である。親は子にこのような戦略を採らせないでほしい。

 冒頭のカウンセラーのケースから話がずれてしまったような気がする。新たに図を作るのが面倒なので、上の「子、母、父」の図で考えると、「子供にとって夫婦げんかはなぜ辛いか」と同じでバランスの崩れた図5に相当する。片方の味方になってもう一方の悪口を言うのは図2に相当し、安定してしまう。仲直りしてもらおうとしたら、図7bの状態から図1bの状態に移ってもらうのが良い。ただ図4bの状態になって仲直りしないまま自分か嫌われて終わるかもしれない。

 なぜ、この記事を書こうと思ったか。それは対立する両者を仲直りさせようと思っている仲介者はどのような態度でいるべきかについて、ハイダーのバランス理論で説明したくなったからである。
 仲介者は図1b~図8bの子の立場にある。目標は図1bである。対立する一方に好かれつつ、もう一方を好きでいなければならない。その状態を対立する両者に分かるようにしておかなければならない。両者が対立したままでは、図5のようなバランスが崩れた状態で辛いかもしれない。しかし、その辛さに耐えて、図7bの状態を保たなければならない。そうすれば図1bの状態になるかもしれない。
 もしも図5の状態の辛さに負けて、一方に味方してもう一方の悪口を言うようになったら、図2bの状態で安定してしまう。対立する両者の仲直りは難しくなるだろう。

 最後に、記事のタイトルの「味方の敵は敵」は図2や図2bのバランスの良い状態のことである。「味方の敵も味方」であることを示す戦略はバランスの悪い図5や図7bであり、相手に「味方の味方は味方」の図1や図1bに移ってもらう戦略である。


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