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【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

ベーシックインカム:財源を消費税にする案

 【ベーシックインカム:財源を所得税にする案】に続いてツイッターで使った図(参照)を使って私が理解したBIの仕組みについて少しまとめる。

 今回は消費税をBIの財源にする案について書く。

 消費税をBIの財源にする案を最初に聞いたときは絶対に無理だと思った。例えば、1億2500万人に毎月8万円を支給するとしたら、一年で120兆円を消費税で集めなければならない。今は消費税率5%で10兆円しか集められていない(参照)。消費税率を12倍の60%に上げたとしても、税込価格が上昇することになるので給与が増えない状態では消費が減って120兆円は集まらないのではないかと思った。しかし、BIが支給されて所得が増えるので話は単純ではない。

注:消費税率5%で10兆円を集めるには税抜き価格で200兆円、税込みで210兆円が使われなければならない。消費税率60%で120兆円を集めるには税抜き価格で200兆円、税込みで320兆円が使われなければならない。税込価格で210兆円しか使えないとしたら消費税率60%で集まるのは約79兆円に過ぎない。税込価格で210兆円しか使えない状態で消費税120兆円を集めるには消費税率を133%にしなければならない。しかし、BIにより使えるお金が120兆円増えるのでBI無しで使えた210兆円と合わせて税込価格で330兆円が使えることになり、消費税率60%で120兆円を集めることが可能になる。
 ちなみに、消費税率の計算式は次の通り。
 (消費税率)=(税込み価格-税抜き価格)/(税抜き価格)
 (消費税率)=(消費税)/(税込み価格-消費税)

 消費税をBIの財源にする案の中には消費税により物価が上昇しないように法人税や所得税など消費税以外の課税を廃止する案がある。商品の価格には法人税や所得税などが含まれているから、それらを廃止して消費税に一本化すれば物価が上昇しないという案である(参照)。ドイツで制作されたベーシックインカム紹介のための長編フィルム(参照)の終わりの方でも課税を消費税に一本化する案が紹介されている。
 ここでは、その案を基にして書く。

 【ベーシックインカム:財源を所得税にする案】と同様に国民が5人だけの国を想定してお金の流れを見てみる。消費税だけを財源にして国民に10万円のBIを支給した場合、次の図のようになる。

国民が5人の国で消費税だけを財源にして10万円のBIを実施した場合の政府の収支(国民のBI前所得の総額100万円、消費税率100%)(クリックで拡大)

 BIが支給される前の国民A,B,C,D,Eのそれぞれの所得は70万円、20万円、10万円、0円、0円だったが、政府から10万円ずつBIが支給されて、所得が80万円、30万円、20万円、10万円、10万円になり、消費可能金額は消費税(消費税率100%)抜きで40万円、15万円、10万円、5万円、5万円になる。その全てを店で使うと、店には40万円、15万円、10万円、5万円、5万円が入り、政府には店を通して消費税の40万円、15万円、10万円、5万円、5万円が入る。消費税による政府の収入は75万円だが、BIに必要なのは50万円だけなので、残りの25万円は他の事業に使われる。
 国民はBIが支給される前の給与等による所得よりも多く消費できる点に注意が必要である。例えばBI前所得が70万円しかなかったAが店に支払った金額の総額は80万円である。先にBIの10万円が支給されてなければ不可能である。

 BI支給前の所得と消費税抜き消費可能金額の関係をグラフにすると次のようになる。

消費税を財源にした場合のBI支給前の所得と消費税抜き消費可能金額の関係(BI:毎月10万円、消費税率:0~200%、所得の100%を消費すると仮定する)(クリックで拡大)

 消費税率を上げるほどグラフの傾きが緩やかになっていて、BI支給前の所得が高い人ほど使える金額の減少が大きくなり、BI支給前の所得が低い人は所得が高い人ほどは減らないことが分かる。消費可能金額が実質的な所得なので、所得税を財源にした場合(参照)と同様に、BIは所得の高い人から低い人への所得の再分配である。

 さて、消費税をBIの財源にした場合、国内で商品を買ったり民間のサービスを利用したりしてもらわないと消費税が入らない。課税を消費税に一本化した場合は、消費税が入らないと他の事業のための予算も足りなくなる。一年間の国民の消費の消費税込みの総額と消費税率の関係をグラフにすると次のようになる。

消費税を財源にした場合の国民の消費の総額と消費税率の関係(BI支給人口:12500万人、BI以外で必要な予算:70兆円)(クリックで拡大)

 財務省のサイト【予算・決算:財務省】で平成20年度の歳出からBI導入で必要なくなる歳出を引いて残りの歳出の合計を調べたら75兆円くらいになった(参照)。そこで、グラフではBI以外で必要な予算を70兆円として計算した。
 1億2500万人に毎月8万円を支給するとしたら、一年で190兆円(BI120兆円、BI以外70兆円)を消費税で集めなければならない。国民の消費の税込み総額が380兆円を超えないと消費税率を100%以下にできない。消費税率を50%以下にしたければ、消費総額が570兆円を超えなければならない。BIで支給されるのが120兆円だから、BI前の所得の総額が450兆円を超えなければ無理である。また、消費額が小さいと必要な消費税率が急激に上昇することが分かる。消費額が190兆円以下になったらBIを支給するための財源が不足する。そのようなことが起こるかどうか分からないが、それが消費税を財源とする案の欠点である。

 BIの財源である消費税収入が減少する理由として、給与所得などBI前所得の減少の他に、貯金や投資・投機などにより所得を消費に回さないことも考慮する必要があるだろう。改めて、国民が5人だけの国を想定してお金の流れを見てみる。消費税だけを財源にして国民に10万円のBIを支給した場合、次の図のようになる可能性がある。

国民が5人の国で消費税だけを財源にして10万円のBIを実施した場合の政府の収支(国民のBI前所得の総額100万円、消費税率100%、貯金や投資・投機などを考慮)(クリックで拡大)

 国民のそれぞれの所得は最初の図と同じだが、Aは銀行に10万円貯金し、証券会社を利用して投資や投機に10万円を使っているため、店でお金を使って支払っている消費税が30万円に減少している。Bも同様に10万円を貯金したせいで支払っている消費税が10万円に減少している。その結果、政府の収入は60万円に減少し、BIで50万円を使った残りは10万円に減少する。BI以外の歳出を減らさざるを得なくなっている。貯金や投資・投機に回る所得が増えれば、BIのための予算も足りなくなる。
 国民が所得の全てを消費税を支払うような消費に使わなかった場合のBI前所得と消費税率の関係をグラフにすると次のようになる。

消費税を財源にした場合の国民のBI前所得の総額と消費税率の関係(BI支給人口:12500万人、BI支給額:毎月8万円、BI以外で必要な予算:70兆円)(クリックで拡大)

 毎月8万円のBIが支給された場合について計算した。消費可能な金額は横軸の「国民のBI前所得の総額」よりも120兆円多い。
 国民が所得の全てを消費税を支払うような消費に使った場合(消費率100%)、消費税率を100%以下にするには給与などのBI前所得の総額が260兆円必要である。もしも国民が所得の半分しか消費税を支払うような消費に使わなかった場合(消費率50%)、消費税率を100%以下にするには給与などのBI前所得の総額が640兆円も必要になる。非現実的な額になる。投資や投機で得た利益に対して高い税率で課税すれば消費税収入の減少分を補えるかもしれないが、税率が低い他国との競争(マネーゲーム)で不利になるかも知れず、熟慮する必要があるだろう。

 ところで、上では「国民」と書いているが、消費税をBIの財源にして日本国民だけにBIを支給するとしたら、外国人が日本国内で食事や買い物をして消費税を支払ってもBIを受け取れないことになる。消費税をBIの財源にする場合は、日本国内で消費税を支払った人にBIを支給する方が自然だろう。日本国民でも乳幼児は自分でお金を使って消費税を支払うことはないが保護者などが養育のためにお金を使って代わりに支払っている。国内に在住する限り、ほとんどの人が消費税を支払っていると考えて良い。それが所得税をBIの財源にする場合との違いである。所得税は日本国民でも支払ってない人の方が支払っている人よりも多い。
 観光客を含めて日本国内にいる全ての人に対してBIを支給するとなると、1日だけ滞在した観光客と1ヶ月滞在した観光客とに同じ一月分のBIを支給するのは不自然である。最短でも24時間滞在した人に限定するとして、日割りでBIを支給した方が良い。紙幣や硬貨を支給するのは非現実的だが、指定の銀行口座に振り込むか何らかの電子マネーの形で支給することにすれば可能だろう。
 BIを毎日支給するとなると、上の「一年間の国民の消費の消費税込みの総額と消費税率の関係をグラフ」の「BI支給額」も一日の支給額に変更した方が使いやすい。そのグラフを以下に示す。

消費税を財源にした場合の国内での消費の総額と消費税率の関係(BI支給人口:一日平均12500万人、BI以外で必要な予算:70兆円、BIを毎日支給する場合)(クリックで拡大)

 消費税をBIの財源にする案については、他にも考慮しなければいけないことが多そうである。
 例えば、法人税や所得税など他の税金を無くして消費税に一本化することで物価の上昇を抑えるのだが、上に見たように必要な消費税率が異常に高いので本当に物価上昇を防げるか不明である。もしも物価が上昇するとしたら、同じ製品を国外で購入した方が安くなるかもしれない。インターネットを利用して買うことができるので個人輸入は容易である。国内にいる人が国外で売られている商品を買った場合、政府に消費税は入らない(追記:一応、現行の消費税法でも、課税価格が1万円を超えると消費税は免税になりません。」ということらしい。参考)。国外に旅行して買い物をして帰ってくる場合も政府に消費税は入らない。輸入税を上げるなど何らかの対策が必要だろう。もちろん、いろいろな手段で脱税が行なわれる可能性もあるが、それは現在と同様に国税局査察部などが対応するしかないだろう。
 また、消費税率は前年の消費税収入を基にして決めることになるが、変動が激しいと物価の変動が激しくなる。BI以外の歳出を調整することによって消費税率を安定させる方法もあるが、どこまで可能か熟慮する必要がある。
 所得税が廃止されることにより、企業は労働者の手取りが減らない程度まで賃金を下げることが可能になるが、実際に下げられなかった場合にどうなるかも熟慮する必要がある。
 消費税を財源にするということは国内での大量消費を求めることになるが、限界はないだろうか。
 消費税をBIの財源にする案は所得税を財源にする案と比べて複雑だが、実現したら経済の仕組みが大きく変わりそうで興味深い。シンプルな仕組みの方が把握しやすくトラブルが起こりにくかったりトラブルが起こった際に対処しやすいと思うので、私は所得税を財源にする案の方が好きだが、消費税案の方が国民に受け入れられやすいのなら、そちらでBIを実現しても良いと思っている。

追記(2011/5/11):
 ツイッターにコメントを頂いたのでまとめた。


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