モンティ・ホール問題:補足4
モンティ・ホール問題について書くのは久しぶりである。
dora_the_kidさんが私のブログを読んでくださり、トラックバックも頂いた。「“巷でよく言われている回答”を数式で表現できないか」(参照)ということで、どうやら、“巷でよく言われている回答”では次の確率を求めているらしい。
まず、数式で使う変数について。
- ドアA,B,Cを小文字のa,b,cで表現
- X_1:プレイヤーが1回目に選ぶドア
- X_2:プレイヤーが2回目に選ぶドア
- H:当たりドア
- E:主催者が開けるドア
“巷でよく言われている回答”で求めている確率は次の通り。
- ドアを変えない場合の当たる確率=P(X_1=a,H=a,E≠a,X_2=a)
- ドアを変えた場合の当たる確率 =P(X_1=a,H≠a,E≠a,E≠H,X_2=H)
P()の()内は","で区切られているが、","で区切られた条件の全てが同時に成立する確率という意味である。(追記:「E≠a」が「E=b」でない点が重要。下の式ではさらに「H≠a」であり「H=c」ではない点が需要。)
さて、dora_the_kidさんのブログでは、この確率を変形三囚人問題に当てはめると正答が得られないことが示されている(参照)。
Aが恩赦になる確率(ドアを変えない場合の当たる確率に相当する)については『事後確率の分子を1/2で割ることに等しいが、事後確率の分母は5/8なので、1/2は事後確率の分母の係数を考えていることにはならない。従って正答を得られない。』ということらしい。「事後確率の分母」とは P(E=b) のことである。すなわち、「1/2≠P(E=b)」だから正答にならないということらしい。この「1/2」とは図を見るとP(E=b|H=a)らしい。逆に考えれば、次の式が成立すればベイズの定理で求めた答と一致するということである。
P(E=b|H=a)=P(E=b)
Aが恩赦にならない確率(看守が選ぶ囚人がBなのでCが恩赦になる確率であり、ドアを変えた場合の当たる確率に相当する)については『事後確率の分子を2/3で割ることに等しいが、事後確率の分母は5/8なので、2/3は事後確率の分母の係数を考えていることにはならない。従って正答を得られない。』ということらしい。「2/3≠P(E=b)」だから正答にならないということだが、「2/3」とは図を見るとP(H=c|H≠a)らしい。逆に考えれば、次の式が成立すればベイズの定理で求めた答と一致するということである。
P(H=c|H≠a)=P(E=b)
私は、【モンティ・ホール問題】で“巷でよく言われている回答”で正答する条件を次の式で表した。
P(B)/P(C) = P("-C"|A)/P("-B"|A)
上の変数を使うと次のような条件式になる。
P(H=b)/P(H=c) = P(E=c|H=a)/P(E=b|H=a)
この式が成立すれば、モンティ・ホール問題で成立している「P(E=b|H=a)=P(E=c|H=a) かつ P(H=b)=P(H=c)」という条件を満たさなくても、“巷でよく言われている回答”がベイズの定理で求めた答と一致する。
そこで、上記の条件式についても次のような変形ができるのではないかと思った。
- P(E=b|H=a)=P(E=b)
→ P(H=b)/P(H=c)=P(E=c|H=a)/P(E=b|H=a) - P(H=c|H≠a)=P(E=b)
→ P(H=b)/P(H=c)=P(E=c|H=a)/P(E=b|H=a)
矢印の向きは逆でも良いが、私が確認したのは上のような向きである。そして、確認した結果、変形できることが分かった。
読者が確認してくれれば良いのだが、再確認が面倒なので以下にメモしておく。
- P(E=b|H=a)=P(E=b)
- P(E=b|H=a)=P(H=a,E=b)+P(H=b,E=b)+P(H=c,E=b)
- P(E=b|H=a)=P(H=a,E=b)+P(H=c,E=b)
- P(E=b|H=a)=P(H=a)P(E=b|H=a)+P(H=c)P(E=b|H=c)
- P(E=b|H=a)=P(H=a)P(E=b|H=a)+P(H=c)
- P(E=b|H=a)(1-P(H=a))=P(H=c)
- P(E=b|H=a)(P(H=b)+P(H=c))=P(H=c)
- (P(H=b)+P(H=c))/P(H=c)=1/P(E=b|H=a)
- P(H=b)/P(H=c)+1=1/P(E=b|H=a)
- P(H=b)/P(H=c)=1/P(E=b|H=a)-1
- P(H=b)/P(H=c)=(1-P(E=b|H=a))/P(E=b|H=a)
- P(H=b)/P(H=c)=P(E=c|H=a)/P(E=b|H=a)
- P(H=c|H≠a)=P(E=b)
- P(H≠a,H=c)/P(H≠a)=P(H=a,E=b)+P(H=b,E=b)+P(H=c,E=b)
- P(H=c)/P(H≠a)=P(H=a,E=b)+P(H=c,E=b)
- P(H=c)/P(H≠a)=P(H=a)P(E=b|H=a)+P(H=c)P(E=b|H=c)
- P(H=c)/P(H≠a)=P(H=a)P(E=b|H=a)+P(H=c)
- P(H=c)(1/P(H≠a)-1)=P(H=a)P(E=b|H=a)
- P(H=c)(1-P(H≠a))/P(H≠a)=P(H=a)P(E=b|H=a)
- P(H=c)P(H=a)/(P(H=b)+P(H=c))=P(H=a)P(E=b|H=a)
- P(H=c)/(P(H=b)+P(H=c))=P(E=b|H=a)
- (P(H=b)+P(H=c))/P(H=c)=1/P(E=b|H=a)
- P(H=b)/P(H=c)+1=1/P(E=b|H=a)
- P(H=b)/P(H=c)=1/P(E=b|H=a)-1
- P(H=b)/P(H=c)=(1-P(E=b|H=a))/P(E=b|H=a)
- P(H=b)/P(H=c)=P(E=c|H=a)/P(E=b|H=a)
なるほど、既に正巳さんは正答になる条件を導いていたんですね。
それが、私の図で説明したものと本質的に同じだったと。
ちなみに、逆の矢印は下の行から順に上の行へたどればいいだけなので、このメモは
・P(E=b|H=a)=P(E=b)
⇔ P(H=b)/P(H=c)=P(E=c|H=a)/P(E=b|H=a)
・P(H=c|H≠a)=P(E=b)
⇔ P(H=b)/P(H=c)=P(E=c|H=a)/P(E=b|H=a)
を示しています。
お見事です。
by dora_the_kid (2010-08-14 12:46)
dora_the_kidさん、ありがとうございます。
下から上に向かうと突然新しい式が加わるんですよね。
それが難しい。(^^;
そんなことをせずに式を減らすだけで導ければなぁと思ったのですが、上から下で成功したので下から上は横着して省略しました。(^^;
ツイッターの方の
P(X_1=a,H≠a,E≠a,E≠H,X_2=H)=P(H≠a)
は余裕があったら確認したいです。
dora_the_kidさんの図を見て直感で書いただけで、「4つのドアがあって主催者が1つドアを開けるとき」など一般化できるかどうかは考えてなかったので…。
by 正己 (2010-08-14 16:48)