日本の精神科医療の歴史
『ハンセン病問題に関する検証会議 最終報告書』を読んで
http://www.jlf.or.jp/work/hansen_report.shtml
3月2日に報道された時は「【別冊】ハンセン病問題に関する被害実態調査報告」と「要約版」だけだったような気がする。久しぶりに見たら「ハンセン病問題に関する検証会議 最終報告書」と「【別冊】胎児等標本調査報告」がアップロードされていた。余裕がなくてまだ全部を読んでいないが、目次に「第8 ハンセン病および精神疾患患者についての比較法制処遇史」とあったので、その節は読んでみた。「第十 ハンセン病医学・医療の歴史と実態」の中の8節目である。URLは次の通り。
http://www.jlf.or.jp/work/pdf/houkoku/saisyu/10.pdf(PDF形式)
255ページ(ファイルの47ページ)から281ページ(同73ページ)である。
次の文章で始まる。
日本におけるハンセン病対策の特殊性を浮き彫りにするには、他のいくつかの疾患と対比して検討することが有効であろう。たとえば、戦前には的確な治療法を欠いた結核は、遺伝病かと忌み嫌われ、その療養所建設には激しい反対運動が起こり、結核対策に取り組む国の姿勢もおざなりであった。現在の疾患としてはエイズを取り上げることもできよう。
ここでは精神病を取り上げる。精神病の多くは、慢性の経過をとる。戦前に入院患者の何分の1かを占めていた進行麻痺(梅毒生脳疾患)を例外として、直接に死を招くことは少ない。この精神病患者が日本の近代化の過程で排除され封じ込められていく過程は、ハンセン病患者のそれにほぼ平行している。
(『ハンセン病問題に関する検証会議 最終報告書』255ページ)
日本の精神科医療(政府の対応)の歴史の概要を知るのに役立つかもしれない。ハンセン病問題と比較しながら述べられているので精神科医療の歴史だけを知りたい人には少し読みにくいかもしれない。しかし、全く知らなかった人は「えっ? そんなことがあったの?」と思えるかもしれない。ハンセン病問題に関しては数年前に報道されていたが、精神病患者に対する政府の対応の歴史に関しては私の見る限り報道されていないような気がする。ハンセン病患者(回復者)に対するのと同様に酷い扱いだった。ぜひ知っていただきたい。知って、繰り返さないように心がけてほしい。
ちなみに、報告書には著者の意見が随所に見られるが、私は著者の意見に全面的に賛成しているわけではない。例えば、「八 歴史から学び取るべき原則」の「2」に『諸外国では、裁判所命令によって医療を強制し、あるいは差し止める手続きがよく使われる』とあり、その後に『日本でこういった手続きを考えるとき、司法手続きがあまりに遅いことが問題である』と指摘して『法的手続きの迅速化も強く求められる』と結んでいることから、著者は精神病患者に対する医療の強制を認めていると思われる。その前に記されているように「医学・医療界の責任」の項(私はまだ読んでいない)を参照する必要があるかもしれないが、私は、本人の生命が危険な場合や放っておくと重大な後遺症が残る場合で、かつ本人が同意できない(事前の意思表示(←治療拒否)も無い)場合以外はインフォームド・コンセント無しに治療を行うことは認められない。
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