「限られた財源」強調の厚労相
『水島広子の国会質問【厚生労働委員会★2005.07.01】--- 2005.08.02発行』を読んで
http://blog.mag2.com/m/log/0000056084/106271714
障害者自立支援法案が衆議院を通過する前の衆議院厚生労働委員会の議事録であるが、少し紹介させていただく。引用部分の中で特に重要だと思った部分は私が強調表示させていただいた。また、音声ブラウザで閲覧されることを想定して改行位置は変更してある。
○尾辻国務大臣
(前略)
その一方でございますけれども、子供の健全育成を目的とした育成医療など障害者に係る公費負担医療制度につきましては、制度を維持し、それから、これは今回の見直しの中で何回も申し上げておることではありますが、限られた財源の中で必要な医療を確保する、極めて限られた財源の中でという、このことをぜひ御理解いただきたいと思うんですけれども、申し上げますと、そうした中で必要な医療を確保するためということで、見直しを行うこととしておるわけでございます。(以下略)
(『水島広子の国会質問【厚生労働委員会★2005.07.01】--- 2005.08.02発行』)
『限られた財源の中で』を二度も繰り替えしている。それだけ強調したいのだろう。水島さんも仰っているが『結局のところは、最初に財政論ありき』なのである。財源のことは考えずに先ずは必要な医療を確保し、足りない場合に補正予算を組む仕組みの方が良い。『限られた財源』は一時的なことで足りなければ増やせるはずである。今までもいろいろな政策で補正予算を組んできた。障害者自立支援法案は不足分の負担が国や都道府県の義務になるようだが、利用者負担の考えを捨てて、その義務的経費の考えを残せば高く評価できる。そもそも、不足分を国や都道府県が負担することにしたのだから、利用者に負担してもらわなくても問題ないはずである。「利用者にも負担させますので国や都道府県が不足分を必ず負担することにしてください」のように、義務的経費を財務省にお願いした時に利用者負担を取引材料にしたのかもしれない。国民に負担してもらうとしたら、所得の再分配ということで、制度の利用者ではなく健康な金持ちに負担してもらえば良い。政府がそうしようと思えばできるはずである。
さて、尾辻国務大臣の答弁に対する水島さんの意見は次の通りである。
○水島委員
制度そのものは維持されて生き残っても、それが、本来その制度が恩恵を与えるべき子供たちや御家族がそこまでついていけなくなってしまう、そんなことになったら、そもそも制度としての意味が全くないわけでございますので、先ほど私が、まず子供を中心に、そして子供の環境をつくっている一番の中心である親御さんのことをよく考えてほしいというふうに申し上げたのは、まさにそういう点でございます。
(中略)
そして、今の大臣の御答弁を伺っておりましても、結局のところは、最初に財政論ありきで、そのしわ寄せを子供に押しつけているということになると思います。
きょう資料の一として配らせていただいておりますが、これは厚生労働省からいただいた資料でございます。先ほど五島委員の方からも御紹介いただきましたけれども、この改正の影響、育成医療の方で見ますと六億円、何か一カ月ずれて医療費の請求があるということですので、これが五カ月分ということになるそうで、これから一年分を計算いたしますと、年間の国庫ベースの財政効果というのはたかだか十四億円というような計算になると思います。
政官業の癒着の中でむだに使われている税金や年金保険料のむだ遣いの額を日ごろ聞いている立場としては、十四億円のためにこれほど非情なことを強行するのではなく、ほかのむだをなくして十四億円くらい捻出すべきだと考えます。税金のむだ遣いのツケを子供たちの医療に回すのが日本ですと、大臣は外国に行って胸を張っておっしゃれるでしょうか。本当に考え直していただきたいと思っています。本当にこれは大人として恥ずかしいことだと思います。
(中略)
育成医療の現実を知ってもらった上で世論調査をすれば、育成医療の存続を圧倒的多数の方が支持されると私は信じています。今この委員会室にいらっしゃる与党の議員の皆様も、いかがですか、この十四億円を浮かすために育成医療を切るべきだということを自信を持っておっしゃれる方、もしいらっしゃったら、本当に手を挙げていただきたいと思いますけれども、これは人間として私は挙げられないと思うんです。それほど、私は、これは日本の政治の中でのモラルの最後のとりでではないかなと今回思っているところでございます。(以下略)
(『水島広子の国会質問【厚生労働委員会★2005.07.01】--- 2005.08.02発行』)
仰る通りだろう。制度が維持されても、制度を利用する必要がある人が利用できない制度では無意味である。そして、税金の無駄遣いのツケが社会的弱者に回っている。引用した部分は育成医療に関する議論であるが、『子供』の部分を『障害者』に変えても同じようなことが言える。
『これは人間として私は挙げられないと思うんです』の部分はその通りだが、残念ながら他の人が手を挙げれば自分も挙げてしまう人がいると思う。集団で同じことをすると責任を曖昧にできるからだろう。多数決の欠点である。また、同じ結果をもたらすとしても、その結果が見えにくい言葉に置き換えると手を挙げてしまう人がいると思う。賛成することが悪いことでも、賛成することが良さそうな言葉に置き換えると賛成してしまう人がいると思う。悪いことをしている意識が薄れるからだろう。
育成医療に関して水島さんは次のように結んでいる。
○水島委員
(前略)
そして、わずかと言うとちょっと変ですけれども、十四億円の話でございますので、これは、皆様に少し汗をかいていただいて、何とかむだ遣いの中から確保していただきたいと思う金額でございますので、そこは本当に重ねてお願い申し上げたいと思います。(以下略)
(『水島広子の国会質問【厚生労働委員会★2005.07.01】--- 2005.08.02発行』)
十四億円をどのように捻出したら良いかもっと具体的に示してほしかったが、水島さんと同じ思いである。また、無駄遣いの中から確保するだけでなく、社会保障費より優先順位を下げても良いような予算がたくさんあるだろうから、それらを社会保障費に回してほしい。
以下は障害者自立支援法案に関するこれまでの私のブログ内の記事
【働いたらお金が減る人たち】
【応益負担で前向き?】
【財務省様の仰せの通りに?】
【やっと与党とのパイプができた?】
【障害者自立支援法案:可決】
【障害者自立支援法案:委員名簿】
【障害者自立支援法案:八代議員】
【応益負担の理念図】
【障害者自立支援法案:脅し?】
【障害者自立支援法案:強行採決?】
【障害者自立支援法案:与党修正案】
【厚生労働委員会の様子】
【32条は大切2】
【応益負担に賛成なのね?】
【朝日新聞と厚労省】
【32条は大切】
【その公平は本当に公平?】
【「自立」とは自分で決めること】
特定財源化にすれば、心置きなく使えるのにね。
役に立たないイラク派遣には、何千億と支出してるのに。
言葉ありません。
by (2005-08-04 14:06)
jackさん、コメントありがとうございます。
予算の仕組みに詳しくないので特定財源化が良いかどうか分かりませんが、無駄遣いをしていることは確かなので、そのお金を社会保障費に回してほしいです。
by 正己 (2005-08-04 17:12)