自立支援法のパブリックコメント
『精神科病棟の一部、退院支援施設に 厚労省』(朝日新聞、2006/8/24)を読んで
http://www.asahi.com/health/news/TKY200608240351.html
次の部分
退院支援施設の詳細は「電子政府の総合窓口」のホームページのパブリックコメント欄に掲載されている。9月15日まで意見を受け付け、9月末までに実施するかどうかも含めて検討する。
このパブリックコメントとは、たぶん次のことだと思う。
- ・「障害者自立支援法に係る省令・告示で定める事項等」に関する意見募集について
- http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495060088&OBJCD=&GROUP=
どの部分を指すのか分かりにくかったが、【別紙6】に「(2)精神障害者退院支援施設加算について」がある(「s49506008804.pdf」の14ページ)。間違っていたらコメント欄でご指摘ください。
この問題に関しては以前に読売新聞に載っていて、私のブログの「未退院なのに退院とする政策」からリンクを張った。パブリックコメントを募集することになった経緯について記事になっているかもしれないがGoogleアラートで配信されてこないのでなっていないかもしれない。パブリックコメント募集の「意見提出が30日未満の場合その理由」欄に「関係団体や地方自治体からの要望の状況等を把握、検討の上、これらの一部を踏まえたものとする必要があるが」とあるが、異例の緊急パブリックコメント募集となった背景が重要そうである。「退院支援施設」については、反対されて、パブリックコメントを募集したということで誤魔化そうとしているのかもしれない。「退院支援施設」を求める人たち(主に病院関係者?)もいるということで反対意見を潰すのかもしれない。
その他、障害者自立支援法では、最近は次のようなパブリックコメントを募集しているようである。
- ・「障害者自立支援法施行令等の一部を改正する政令案」、「障害者自立支援法の一部の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案」に対する意見募集について(2006/9/11まで)
- http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495060075&OBJCD=&GROUP=
- ・障害者自立支援法第58条第3項第3号の厚生労働大臣が定める額に係るパブリックコメントの募集について(2006/9/15まで)
- http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495060080&OBJCD=&GROUP=
その他にもありましたら、コメント欄でご指摘ください。
追記(2005/8/25):
パブリックコメント募集前の様子が書かれた記事が毎日新聞にあった。
- ・精神科患者:病棟に退院支援施設、厚労省検討 「数字合わせ」批判も(毎日新聞、2006/8/23)
- http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20060823ddm012040033000c.html
- ・精神科患者:病棟に退院支援施設 厚労省検討(毎日新聞、2006/8/23)
- http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20060823k0000m040146000c.html
次のように書いてある。(追記)
しかし、精神障害者らでつくる「こらーる・たいとう」(東京都)の加藤真規子代表は、日本の精神障害者が他国と比べ長期間、病院に収容されてきたことに触れた上で、「中間施設でなく地域の受け皿を国が整えるべきだ。市町村には受け入れ能力に格差があり、このままでは地域移行は進まない」と指摘する。
加藤代表らは退院支援施設の撤回を求める署名を呼び掛け、22日現在、5000人分が同省に提出されている。また、障害者団体では23日に同省と交渉し、抗議行動も展開する。
(『精神科患者:病棟に退院支援施設、厚労省検討 「数字合わせ」批判も』)
追記(2006/8/26):
パブリックコメント募集前の様子が書かれたブログ記事があった。
- ・8月23日 「精神障害者退院支援施設」厚労省交渉報告(暴走する「心神喪失者等医療観察法」の廃止へ向けて)
- http://blogs.yahoo.co.jp/taronanase/39191349.html
次のように書いてある。
昨日、8月23日は、全国から250名の方が駆けつけてくださる中、精神障害者退院支援施設に関して厚生労働省交渉と抗議行動を行いました。
14時から厚労省前で抗議行動を開始し、15時から交渉がスタートし、交渉が終わったのは23時過ぎでした。厚労省前では、交渉終了時まで実に9時間半ものあいだ、力強く抗議行動を展開しました。
交渉団は、精神障害の当事者を中心に20名、厚労省は担当者4人が出席しました。
厚労省は
・8月24日の課長会議に出す
・パブリックコメントを9月中旬まで募集する
・10月1日から実施する
と説明しました。
厚労省の姿勢は非常に堅く、6時間ほど硬直した状態が続きました。その後も粘り強く交渉を続け、
『・本日(24日)の課長会議に出す資料には10月1日実施とは書かずに「実施時期を含めて検討」と明記する
・9月にパブリックコメントで出た意見を踏まえて、再度私たちと話し合いの場を持つ。』
という2点を引き出し、確認しました。
「再度私たちと話し合いの場を持つ」と書いてあるが、厚労省にとっての「話し合い」は「説得」だろう。そして、説得できなかった場合、その「話し合い」のことを指して「十分に説明した」と主張するだろう。
追記(2006/8/27):
パブリックコメントのどの部分が精神障害者退院支援施設の問題に関する部分か分かりにくい(たぶん故意に分かりにくくしている)のだが、次のブログ記事に該当個所を教えてくれる文章があった。
- ・パブコメ、簡単に書けます!(暴走する「心神喪失者等医療観察法」の廃止へ向けて)
- http://blogs.yahoo.co.jp/taronanase/39267591.html
パブリックコメントのアドレスは以下です。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495060088&OBJCD
さてこの中の、概要 (PDF)の別紙5−6自立訓練」事業における、「宿泊訓練型」の新設。
及び別紙6−4 自立訓練における「宿泊訓練型」の新設等に伴う見直し(2)が、今回の問題の該当箇所になろうかと思います。そこに関するコメントということだけはっきりさせれば後は自由に書いて良いのです。
別紙6の4は「自立訓練及び就労移行支援の報酬について」で(1)が「自立訓練(生活訓練)における「宿泊訓練型」の新設等に伴う見直し」、(2)が「精神障害者退院支援施設加算について」だから、これらのことを指すのかもしれない。(2)の「精神障害者退院支援施設の人員、設備、運営基準」に「【病院設備を転用する場合】」がある。また「【外で設置する場合】」も病院施設を転用せずに新たに「病院(敷地)」の外に設置するのか「病棟」の外(病院敷地内)に設置するのか分からない。「病棟の外」であれば、「【病院設備を転用する場合】」も「【外で設置する場合】」も病院敷地内に設置することになる。それにしても今回のパブリックコメント募集から該当個所を見つけるのは難しい。
追記(2006/10/1):
冒頭の「退院支援施設」を含むパブリックコメントの回答が公表されたようである。
- ・「障害者自立支援法に係る省令・告示で定める事項等」に関する意見募集に対する回答について
- http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?ANKEN_TYPE=3&CLASSNAME=Pcm1090&KID=495060088
「退院支援施設」に関する回答はあるようだが、病院敷地内の退院支援施設に関する回答はないようである。
七瀬です。
「それにしても今回のパブリックコメント募集から該当個所を見つけるのは難しい。」とありますが交渉で勝ち取った「実施時期を含め検討」という文言は、実施するかどうかも検討も「含まれる」わけでして(相手がそういった)、そう考えると、パブリックコメントは、書きやすいかとも思います。
by 七瀬 タロウ (2006-09-01 23:34)
七瀬タロウさん、コメントありがとうございます。
電子政府に掲載された文章を読んだとき、めちゃくちゃ長くて驚きました。退院支援施設だけのパブリックコメントを求めていると思いましたので。それに「退院支援施設」という単語が「報酬」の項に突然出てくるだけで、その前の「自立訓練」の項などに解説がなく、まるで隠しているかのようでした。厚生労働省の悪意を感じたのです。(^_^;)
見つけられればパブリックコメントは書きやすいかもしれません。七瀬さんの意見を参考にしている人も多いかと思います。(^_^)
by 正己 (2006-09-02 07:20)
今までの自立支援法の記事、とても参考になりました。
ありがとうございます。
by あずーる (2006-10-10 02:02)
あずーるさん、コメントありがとうございます。
この記事だけでなく、以前のの自立支援法関連の記事も読んで頂き、とても嬉しいです。ありがとうございます。
by 正己 (2006-10-10 08:08)
ここに書くのが適当か否かわかりませんが、私は前回コメントしたときまでの調査で、以下のような証言を得ております。ご参考までに。
複数の患者さんの証言の要旨
1、自立支援法になるまでは、5%負担であったために1割負担になったら病院にこれなくなると思っていた。
でも、実際には1割負担でも負担上限が決まっているので、逆に頻繁な受診、夜間診療の利用などがしやすくなった。上減額を超えた分は無料だから。おかげで本当に丁寧な治療を受けることができている。今は自立支援法に感謝している。
2、今までデイケアにかかっていた金額は高かった。でも自立支援法ができてからは、上限金額以上の負担が無いので逆に全然安くなった。ありがたいと思っている。
自立支援法に不満を感じている患者さんには、出会ったことがありませんでした。
転載可
by yadokari (2007-01-20 16:39)
yadokariさん、コメントありがとうございます。
そのような人たちもいると思います。
でも、そうでない人たちもいるのでしょう。
そうでない人たちのことは時々NHK教育の「福祉ネットワーク」で紹介されています。
私が直接聞いたわけではありませんが、自立支援法に反対している人たちの集会に行けば、そうでない人たちの話も直接聞けるのかもしれません。
ちなみに、精神障害者に関しては、自立支援法でようやく他の障害者と同等な福祉を利用できるようになったのでしょうから、賛成している人が多いかもしれません。
by 正己 (2007-01-20 17:25)