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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

競争入札だけど「企画競争」という契約形式

 久しぶりにニュース記事を読んで思ったことをこのブログに書く。記事は『海保導入の新型ヘリ、仕様書より性能劣っても全額支払い』(朝日新聞、2008/10/3)であるが、詳細が『海上保安庁が頭を抱える「欠陥ヘリ」導入問題』に書いてあるらしい。そして、読んでみて、「ああ、これか」と思ったのは次の部分。

海保庁では契約前に希望する機体の仕様書を示し、それに見合う性能を有する機種しか応札できないようにしている。
表向きは完全な入札方式だが、「海保庁側は早い段階で欲しい機体を決めており、事実上の随意契約になっている」と関係者は言う。
(海上保安庁が頭を抱える「欠陥ヘリ」導入問題)
「新ヘリには『高い捜索救難活動が行える装備・能力』を要求し、SAR(Search and Rescue=捜索救難)モードという高度なシステムが仕様書にも入っていた。ところが、アグスタ社の不手際などにより、この機能が装備されていなかった」
(海上保安庁が頭を抱える「欠陥ヘリ」導入問題)
そもそも、どうしてAW139に決まったのか。それは海保庁が同機を望んだからである。競争入札が行われたものの、海保庁のヘリの大半がA社の納入であり、その実績から「装備技術部とのデキレース」(業界筋)との声もある。
(海上保安庁が頭を抱える「欠陥ヘリ」導入問題)

 要するに結論が先にあったのである。「SARモード」はその結論にするための口実に過ぎなかったのではないかと思う。他社のヘリにもSARモードがあるのなら他社のヘリが落札してもおかしくない。他社のヘリが落札してないということは、他社のヘリにはSARモードが無かったのではないだろうか。AW139についてもSARモードは「特注」のように感じる。特注でなかったとしたら、装備されてない状態で納入されることは考えにくい。要するに「SARモード」という「特注」を加えることでAW139が落札されるようにしたのではないだろうか。そう考えると、納期に「SARモード」が間に合わなかったことを理解しやすい。

欠落したSARモードは、いずれ装備されるだろうが、それが半年後になるのか、1年後になるのか、「今のところわからない」(海保庁幹部)とは、何とも腑に落ちない。
(海上保安庁が頭を抱える「欠陥ヘリ」導入問題)

 技術的なことは分からないが、もしかしたら「SARモード」は無理な要求、あるいは装備できるとしても難しい要求だったのではないだろうか。だから納期に間に合わず、装備される時期も分からないのかもしれない。
 まとめると、アグスタ・ウエストランド社に他社では難しい(結果から判断するとアグスタ・ウエストランド社にも難しい)「SARモード」の仕様を加えてもらうことでAW139が落札されるようにしたということかもしれない。

本来なら、SARモードが装備されていないことが判明した時点で導入を見合わせるべきだったのに、装備技術部の幹部が独断で3月31日に予定通り「受領」してしまった。
(海上保安庁が頭を抱える「欠陥ヘリ」導入問題)

 目的はAW139を納入してもらうことだっただろうから、納入してもらうための手段に過ぎない「SARモード」が装備されていようがいまいが関係なかったのかもしれない。

 曖昧な書き方になってしまったが、探せば似た構図の入札が他にもあるだろう。契約する会社が決まっていて買いたい品も決まっている。しかし、通常の仕様を要求したら競争入札で他社が落札してしまうかもしれない。だから、契約することが決まっている会社の品の仕様に他社には難しい仕様を加えてもらう。それで最初の予定通りの会社と契約できて予定通りの品が手に入る。付け加えた仕様は「おまけ」に過ぎない。そんな構図である。
 実は「マスコミの皆さん、頑張ってそんな構図の入札を探してみてください」という思いと「探さないでそっとしておいてあげてください」という思いの両方がある。性能や使いやすさ(慣れも含む)の点で「要求する仕様」に書くのが難しいことがあり、どうしても欲しい製品ならその「書きにくい仕様」を満たしていて、その製品を手に入れるための手段として「難しい仕様」を加えてしまうのだとしたら、気持ちは分からないではない。AW139がそういう製品だったのかどうかは分からないが、他の所で行われている似た構図の入札では、そんなことがあるかもしれない。だから「探さないでそっとしておいてあげてください」という思いも少しあるのである。

 ちなみに、次の理由も分からないではない。

もし、海保庁が「仕様書を満たすまで受け取らない」方針を打ち出したら、新ヘリ導入は次年度になってしまう。せっかく確保した予算が消化できず、財務省に予算を召し上げられる可能性さえ出てくる。
そこで「目をつぶって受領した」というわけだが、果たして、それだけの理由で欠陥機を買うだろうか。
(海上保安庁が頭を抱える「欠陥ヘリ」導入問題)

 「せっかく確保した予算が消化できず、財務省に予算を召し上げられる」は予算の構造の欠陥だと思う。消化できなかった予算を次年度に持ち越すことができれば、無理矢理消化することは減るし、次年度の予算が少なくて済むこともあるだろう。持ち越せないから無理矢理消化する無駄遣いが生じているように思われる。それと、事実かどうか知らないが、予算を消化できなかった場合は財務省に謝罪のような文書を提出しなければいけないと聞いたことがある。それと、消化できなかったら、召し上げられた上に次年度の予算も減らされる傾向があると聞いたこともある。それでは、余計に無理矢理消化したくなるだろう。
 そのようなことが起こらないようにする工夫が必要だろう。監視ではなくて、積極的に節約して予算が余るように行動したくなるような工夫が必要だろう。例えば、私の行動パターンでは、節約して貯金してたくさんのお金が貯まったら高価な物を買う。貯金できず、毎年使い切らなければいけないとしたら、毎年の収入よりも高い物は買えない。毎年の収入を増やすしかない。収入が「お小遣い」しかなかったら、「お小遣い」の値上げを要求するしかないだろう。「お小遣い」は「予算」に合わせた譬えだが、働いて稼ぐとしても、給料を増やすよりも節約して貯金した方が早い。使い切らせるよりは貯金して買えるようにした方が良い。次年度の予算は貯金額を考慮して決めれば良い。それでも各省庁は前年度と同じ額か前年度以上の額を要求してくるだろうが。

 上の蛇足のようなことを書いた後に「AW139」でググってみたら、興味深い情報があった。

 さて、今回はそれら2機種と違い今後継続して採用される統一機種が選定されました。これは機種を統一することによりランニングコストの削減と職員の研修負担を軽減する狙いがあります。さらに今回は随意契約に対する社会的な批判を配慮して「企画競争」という契約形式がとられました。従来は価格競争によって決定していましたが、この方式だと価格以外にオプションや保障期間など総合的に「企画書」で評価され選定企業が決まります。
 ヘリは9月中、固定翼機は10月に企画書が提出され審査などの選定作業が進められていました。そしてヘリの機種がついに決定されました。情報自体は航空新聞サイトの日刊で出てましたが、選定された企業からのニュースリリースも18日発表されました。
Japanese Coast Guard Selects The AgustaWestland AW139 Helicopter For Maritime Search And Rescue Operations
 決定したのはアグスタ・ウェストランド社のAW139ヘリコプターです(代理店は三井物産エアロスペース)。詳しい性能は上のリンクをたどってもらうとして、このヘリがまだ“AB139"と呼ばれていた頃の話を少し。
(海上保安庁の新型航空機-蒼き清浄なる海のために 2006/10/20)

 『随意契約に対する社会的な批判を配慮して「企画競争」という契約形式がとられました』ということである。また、『今後継続して採用される統一機種』ということである。その目的は『機種を統一することによりランニングコストの削減と職員の研修負担を軽減する』ということである。契約の度に機種が変わっていたらランニングコストや職員の研修負担が増すことは容易に想像できる。

追記(2008/10/4):
 次のような情報も見つけた。

特に人気の高いのが、イタリアのアグスタウェストランド社製双発ヘリ「AW139」。自由な時間に、目的地まで、自由に飛べる、そして自分仕様にインテリアにも凝ることができて、乗り心地よくて、静かで高速の同機はリゾート地へ向かう“リムジン”として最適だ。過去3年間で200機が完売となり、生産が追いつかず、1年~1年半待ちという状況なのだそうだ。
イタリアの航空機会社『AgustaWestland』
(超高級ヘリコプター - ART BOX CORP.| 07.05.25)

 納期に間に合わなかったのは、人気機種で生産が追いつかなかったからかもしれない。しかし、予算は組まれていて納入が間に合わないと…。だから…。と考えることもできる。マスコミには、納期に間に合わなかった場合の予算の扱われ方についても報道してほしい。


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ぽんた

ここでいう所謂「SARモード」なるシステム(ソフト)は他者でも既に存在するものです。
現に海保のベル412等にはとっくに装備されてますし。
こういうシステムは機体製造会社とは別会社が自動操縦系で考案する場合が多い。
それを色々な機体に適合するように移植されるのが常。
まあ、今回も機種適合が手間取ってるだけでしょうな。
これをもってこの機体が欠陥機であるかの如く吼えるのはなんとも・・・。
by ぽんた (2008-10-04 16:00)

正己

ぽんたさん、情報ありがとうございます。
なるほど、それほど難しい技術じゃないのですね。引用したサイトに「画期的なシステム」と書いてあったからAW139か同じ時期の機種が最初かと思ったけれど、AW139を新たに導入することに決めた海保のベル412等に既に装備されているようなら…。
では、結局は人気がある機種で生産が追いつかなかっただけかもしれませんね。日本の予算の関係で順番を先にしてもらうことはできなかったでしょうし…。そうすると予算を組む際の納期の見積もりのミスでしょうね。
by 正己 (2008-10-04 16:34)

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