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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

無報酬でも問題行動が続く理由を知りたい

 得られると思っていたものが得られないと余計に欲しくなる。そんなことはないだろうか。「心理的リアクタンス」「認知的不協和」という単語を使って説明できそうだが、行動分析学ではどのように説明するのだろうか。私が知りたいのは、自分の成功体験にこだわって失敗しても失敗しても成功した時と同じ行動を続けるメリットである。成功体験が無ければ別の手段を選択しそうである。成功体験が一度なら「あれはまぐれだった」と自分を説得して別の手段を選択するかもしれない。しかし、成功したり失敗したりを繰り返して何度も成功している場合、「成功するはずだ」と期待し続けて失敗しても失敗しても同じ手段を繰り返す。その手段を選択したことは合理的かもしれないが、失敗することもあるのだから別の手段を選択すれば良いのに執拗に同じ手段で成功しようとする。その手段を続けるメリットは何だろうか。
 以前に読んだ久保田新さんの「臨床行動心理学の基礎」に次の図があった。

フラストレーションに関係する行動様式

 図Aは行動が動機づけを満たすように働いている状態である。図Bは邪魔が入って動機づけが満たされなくなった状態である。図Cは動機づけが弱くて行動が止まってしまった状態である。図Dは動機づけが強くて行動を続けるうちに付随する行動で邪魔者が取り除かれて、その行動が強化された状態である。そして図Eが動機づけが満たされない無効な行動を執拗に繰り返している異常固着の状態である。図Fは過去の行動様式に退行した状態らしく、図Gは、本にGの説明として書いてなかったが、「たまたま攻撃的な行動が別の対象に振り向けられて、その結果、部分的に動機づけが満たされる」状態だろう。
 私が知りたいのは図Eが生じる理由である。精神分析や交流分析では説明しやすいかもしれないが、行動分析ではどのように説明するのか知りたいと思った。
 例えば、近所のスーパーに行ったら試食のコーナーがあって試食したら美味しかった。別の日に同じ時間に行ったら、やはり試食のコーナーがあって試食したら美味しかった。その後も同じ時間に行って試食のコーナーで試食して美味しい物を食べ続けた。ある日、同じ時間に行ったら試食のコーナーは無くて試食することはできなかった。以前にも試食のコーナーが無いことがあったので気にせず別の日に同じ時間に行った。しかし、また試食のコーナーは無かった。その後、何度行っても試食のコーナーは無くて試食できなかった。それでも、その人は同じ時間になるとそのスーパーに行き続けた。
 その様な「期待していた報酬が得られなくなっても同じ行動を続ける状態」をどのように説明したら良いのだろうか。
 答を知りたくてネット上で探していたら「フラストレーション効果について」(20-Mar-1970、平出彦仁,青柳肇、横浜国立大学教育紀要9巻63-78ページ)という論文を見つけた。

 「フラストレーション効果について」(平出彦仁,青柳肇)は1970年の論文で古いから、最近では研究が進展して情報が古くなっているかもしれない。また、内容は1950年代のフラストレーション効果に関するAmsel等の実験を巡る議論のレビューであるから、さらに古い。Amsel(1958,1962)等は「フラストレーション動因」を仮定する動因増加説らしく、素人の私は専門用語に慣れてなくてちゃんと理解していないかもしれないが、要するに報酬を期待して行動したけれど報酬が得られなかった場合にフラストレーションが生じて報酬を求める直後の行動が強まるということだろう。実験と結果は次のようなものである。

 AmselとRoussel(1952)は,無報酬によって生ずるフラストレーションは動因の機能を持つこと,及びフラストレーション状態で費される時間とともにその動因強度は変化することとを仮定した。そして飢餓状態下にあるネズミ(以下,特に記してない場合は被験体としてネズミを使用しているのとする)を用いて,二重走路の第一目標箱(G-1)と第二目標箱(G-2)との両方で報酬が与えられるという条件のもとで,走路を走る訓練を繰返してからテスト期に入る。このテスト期ではG-1で試行の半分が無報酬にされ,さらにその際のG-1での拘留時間の長さが種々変えられた。そしてネズミのR-2での走行速度の差が比較されたのである。その結果,G-1での拘留時間の長さによるR-2での走行速度には有意差は認められなかったが,無報酬直後のR-2の走行速度の方が報酬後のものよりも有意に増加していたことを示した(図4)。
(平出彦仁,青柳肇「フラストレーション効果について」横浜国立大学教育紀要9巻)

 この結果をAmsel等は、訓練時に報酬が得られていた第一目標箱で報酬を得られなかったことが動因(報酬を得たい気持ち?)を増加されたから無報酬のネズミの方が第二目標箱に向かって速く走ったと解釈したのに対して、Seward等は、第一目標箱で報酬が得られたネズミは(少し満足して?)動因(飢餓)が低減したから無報酬のネズミと比べて第二目標箱に向かって遅く走ったと解釈したらしい。
 その後にいろいろと実験が行なわれてどちらが正しいか議論が起こっていたらしい。
 日常生活での実感では「得られると思っていたものが得られないと余計に欲しくなる」であるからAmsel等の解釈の方が頷ける。

 それで、「期待していた報酬が得られなくなっても同じ行動を続ける状態」の行動分析学による解釈であるが、結局は分からなかった。問題行動を止める効果的な方法は何度か見た。基本的には報酬が得られなくなったら少しずつ問題行動が減ってくるのだと思うが、また同時に別の手段で報酬が得られるようになれば問題行動が減るのだと思うが、報酬が得られなくなっても問題行動が持続する(あるいは強まる)理由については、まだ頷ける解釈を見つけていない。問題行動によって期待していたのとは別の報酬が得られているのかもしれないし、同じ行動パターンで別の所で報酬が得られているのかもしれないし、そもそも問題行動の本当の目的が別にあるから報酬が得られなくなったように見えても問題行動が続いているのかもしれないが、そうではなくて、本当に本人が期待していた報酬が得られなくて別の報酬も得られなくて同じ行動パターンで他で報酬を得ているわけでもないのに問題行動が続くケースがあるとしたら、その理由は何か。行動分析学ではどのように解釈するのか。いつか知りたいと思う。

追記(2009/6/29):
 続きを書いた。→【フラストレーション効果は消去バースト?】


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