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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

最低賃金制度のあり方

『第4回最低賃金制度のあり方に関する研究会議事録』を読んで
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/txt/s1207-2.txt
次の部分

 1つは、最低賃金の水準の決定の問題です。先ほど言いましたように、そもそも最低賃金というのは、基本的に労働の需給という観点から言えば、供給側の最低限の生活水準を担保するといった趣旨のものでございますので、その水準はあくまでも供給側にとってそれ以下に賃金が下がっては困る、という水準として決められるべきであって、企業がその賃金を払えるかどうかということは、基本的には、理屈の上からは本来は考慮の外にあるはずだと思います。

 この議事録は最低賃金のあり方について考える際に非常に参考になると思う。
 引用部分は清家篤さん(慶應義塾大学商学部教授)の意見の一部である。『供給側』というのは労働を供給する側、すなわち労働者のことである。議事録には『生存費』という言葉が何度か登場する。最低賃金制度が定める最低賃金は労働者が健康で文化的な生活を営める額よりも低くてはいけない、ということだろう。非常に当たり前のことを言っているように思うが、企業の都合で『生存費』以下に最低賃金が定められそうなのだろう。

 清家篤さんの意見は「市場」がキーワードになっていて議事録の序盤は難しく感じられたが、質疑応答の部分で彼の意見が分かりやすくなっていたような気がする。最後の論点整理の議論の部分も含めて、私が理解した範囲で議論の重要な部分(私が重要だと思った部分、清家さんの意見とは限らない、私の意見も含む)をまとめてみたいと思う。

 長くなったのでトップページでの表示はここまでにする。
 続き(全文)を読む場合は、下の「続きを読む」をクリックしてほしい。

 (以下は続き)

 ILO条約の文言を引き合いに出して、最低賃金が『生存費』を下回らない方が良いのは尤もだが、その最低賃金を支払うことで企業が潰れてしまっては元も子もないのではないか、という意見がある。その意見に対し清家さんは『しかし本当に最低賃金のレベルが合理的な水準に決まっている中で、それを払えなくて潰れる会社があっても、それはしようがないと考えるべきではないか』とまで仰っている。私も清家さんの意見に近い。企業が潰れるといけないから政府が定める最低賃金は労働者が生きるのに足りない額でも良い、と考えることはできない。最低賃金が低くて良いとしたら、支払い能力のある企業も低い最低賃金で済ますことができる。それでは良くないだろう。必要な最低賃金を支払う能力がない企業を潰したくなければ国など公的機関が救済すれば良くて、そこで働く労働者が犠牲になるのは変だろう。国民の生活を守ることを優先してほしいものである。

 産業別の最低賃金が定められているが、派遣労働のように最低賃金の異なる他の業種(派遣会社など)から派遣されて働いている人がいる場合、同じ仕事をしているのに最低賃金が異なってしまう。それは問題である。産業別最低賃金は考え直すべきではないか。
 この件に関して清家さんは次のように仰っている。

最近そういった派遣や請負という種類の人たちが、サービス業の方から例えば製造業に入って来て働いているという状況は、同じ産業で、同じ職場で働いている人たちの中に、2種類の最低賃金を適用されている人たちを含む、それは産業別最低賃金があるというときにちょっと変ではないか。そこで働いている人が、みな同じように地域の最低賃金にカバーされて働いているのであればわかるのだがという問題です。

 派遣労働の際の最低賃金に関して現状は次のようになっているらしい。

○前田賃金時間課長
 これまでは派遣元が賃金を払いますので、最低賃金は派遣元の産業が適用されますので、通常は、産業別は派遣元のサービス業にはないので、製造業に派遣されても、それは派遣先の産業別は適用されていないという整理がされているということです。それは整理の仕方で、そう整理するということを議論することは可能だと思います。

 議論中は指摘されなかったようだが、地域別最低賃金も同じような問題を抱えている。職場と生活の場が異なる場合、最低賃金は職場の地域の額になるが、生活を支えるための賃金であることを考えると生活の場で考えなければいけないような気がする。
 議事録では地域別最低賃金と産業別最低賃金との関係が問題になっている。

 家族(世帯)は支えあって生きているのだから世帯単位で『生存費』を考えるべきではないか、という意見(現状)がある。例えば夫が働いて生活が支えられている場合はパートなどで働いている妻の賃金は低くても良いと考える傾向がある。しかし、そのような考え方で最低賃金を定めると独りで暮らしている人の生活が脅かされるので問題である。最低賃金は個人単位で考えるべきである。
 この件に関して清家さんは次のように仰っている。

 ただ、先ほど言ったような意味での最低生存費というのは、私はやはり個人で考えた方がいいのではないかと思います。要するに、個人で供給する人もいるということです。
 例えば、主婦の年金の加入とか、あるいは最低賃金法でも、よく高齢者とか、あるいはボランティアはどうするんだとか、そういう議論がある。それはそれぞれの趣旨でよくわかるのですが、最低賃金制度にしろ何にしろ、例えば個別のある当該の、例えば奥様は最低賃金以下でいいですよと。生活にも支障はないし、それで仕事をくれるのならその方がいいと仮に言っても、そのことによって、その賃金で自分がカツカツの生活をしている人の生活が脅かされてはいけない、という趣旨のものです。
 ですから、例えば主婦を前提に考えるとかいう話になりますと、一番最低賃金制度によって守られなければいけない人たちの条件が崩されてしまう。この最低生存費というのは、生きるか死ぬかだけではなくて、おそらく様々な社会的な意味も含めた尊厳のある生活ということになると思いますが、その賃金であれば、例えば夫の所得等を勘案すれば、あるいは年金等と合わせれば全然問題ない、もっと低くてもいい人はたくさんいるのでしょうけれども、だからといってそれを基準に最低賃金の生存費水準というのを決めてはいけないのではないか、というのが私の考えです。

 世帯単位にすべきか個人単位にすべきかの問題に関しては、後の論点整理の議論で「生活保護」と関係が問題になっている。生活保護制度は「世帯」単位である。私は生活保護が世帯単位であることも問題だと思っている。

 ILOやOECDの文書を引き合いに出して、一人前の仕事ができないとされている十代の労働者や障害者の賃金は最低賃金以下で良い、とされているようだが、私は問題だと思う。搾取を防ぐためにも相手の年齢や障害の有無などにかかわらず最低賃金は支払うべきだと思っている。最低賃金制度の適用除外にするべきではないと思う。

 最低賃金を支払わない企業があった場合の対応に関して、アメリカでは『労働長官が労働者に代わって訴訟を起こすといったような手続』があるらしいが、日本も真似してほしい。最低賃金の件に限らず、労働者自身が訴訟を起こすのは負担が大きすぎる。代わりに訴訟を起こしてくれる者が必要である。
 議事録では『履行確保の方法』『罰則』という観点で問題提起されている。

 論点整理のところで触れていたような気がするし、そうでないような気もするが、最低賃金が上がった場合、すなわち新しい最低賃金以下で働いていた人の賃金が新しい最低賃金まで上がった場合、今まで新しい最低賃金以上で働いていた人の賃金はどうするか。例えば時給700円で働いていた人(A)と時給710円で働いていた人(B)がいたとして、最低賃金が時給710円になったら、Aは時給710円に変わるが、Bは時給710円のままで良いのか、時給を上げるとしたらどのように上げるのか。社員が多い場合、「塵も積もれば山となる」で企業の負担増が大きくなるがどうするか。これに関しては経済学の専門家が調べているだろう。

 以上、議事録を読んで重要だと思った部分をまとめてみた。
 「最低賃金制度のあり方に関する研究会」も今後の議論の論点をまとめたようである。

・「最低賃金制度のあり方に関する研究会」における論点について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/01/s0107-2a.html

 また、厚生労働省のサイトにこの研究会で用いられた資料もアップロードされているようである。

・最低賃金制度のあり方に関する研究会第4回資料
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1207-5.html

 この「最低賃金制度のあり方に関する研究会」はまだ続いていて、2月7日に「第7回最低賃金制度のあり方に関する研究会」が開催されたらしい。それらの議事録や資料は今後アップロードされると思われる。次の検索ページが便利だと思う。

・厚生労働省ホームページ検索
http://www.mhlw.go.jp/search/index.html

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