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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

統計トリック「病院に行くと死ぬ」

 これは、ネット上のある統計データとその解釈を読んで「その解釈は何か変だ」と思ったから書いている。その統計データや解釈へのリンクは張らない。以下は人口1万人の架空の国を想定して書いたものである。ジャーナリストの言ったこともフィクションであり、実在の人物が似たことを言った事実が無い言葉も含まれている。

 国の調査によると、昨年の死亡者数200人の内、150人は死亡前1年以内に病院で治療を受けていたが、50人は病院に行かず、治療を受けていなかったようだ。そのデータを見たジャーナリストは「病院で治療しても無駄だ。治療した人は治療してない人の3倍も死んでいる。治療したことが死亡の原因になっている可能性がある。治療しない方が良い。病院に行かない方が良い。病院に行くと死ぬ」と解説した。その年、人口1万人の内、病院に行って治療を受けたのは1000人で、残りの9000人は病院に行かず、治療を受けていなかった。その調査結果も「病院に行くと死ぬ」という意見を補強することになった。そのジャーナリストは言った。「病院に行った1000人の内150人も死んでいる。15%である。それに対して、病院に行かなかった9000人の内、死んだのは50人だけ。0.6%よりも少ない。やはり病院に行くのは危険である。病院に行くと死ぬ」と。
 実は、国は死に至る病の「早期発見・早期治療」の政策を続けていた。ある年、死に至る病で150人が死んだ。その多くが病院で治療を受けてなかった。そこで国は「早期発見・早期治療」の政策を掲げ、死に至る病になった人に治療を受けてもらうことにした。しかし、一昨年も死に至る病で150人が死んだ。その年は500人が死に至る病になったと推計された。死んだ150人の内、病院に行って治療を受けたのは50人で、残りの100人は病院に行かず、治療を受けていなかった。そして昨年、死に至る病で200人が死んだ。病院に行って治療を受けていたのは150人。病院に行かず治療を受けていなかったのは50人だった。病院に行って治療を受けている人は増えている。しかし、死んだ人も増えた。この結果を見た先のジャーナリストは国を批判した。「早期発見・早期治療でも死者は減らない。むしろ病院に行った人が増えたことで死者が増えた。早期発見・早期治療は間違いだ。病院に行くと死ぬ」と。ところで、その年、死に至る病になった人は1000人と推計された。

 さて、上記ジャーナリストの「病院に行くと死ぬ」は正しいのだろうか。上に書いてあるデータを図で表した。一番下に、死に至る病になった人の半数しか病院に行って治療を受けなかった場合の図も加えた。図を見れば一目瞭然である。上記のジャーナリスト主張は誤りである。

受診率と死亡者数の関係
(クリックで拡大)

 一番上の図を見ると、治療なしで死亡する確率は低く、治療を受けた方が死亡する確率が高いように見える。しかし、治療を受ける必要の無い人は治療を受けない。治療を受ける必要のない人が増えれば増えるほど、この図では治療なしで死亡する確率は低くなる。この図からは「治療を受ける必要があると言われている人も治療しない方が良い」とは言えない。
 二段目の図は昨年の死亡者数200人を治療の有無で分けたものであるが、これだけを見て「治療を受けると治療を受けないよりも死ぬ」と解釈してはいけない。三段目の図と合わせて考える必要がある。
 三段目の図は「死に至る病になった人」の中での分布を表したものである。治療を受けなかった人の半数が死んでいるのに対して、治療を受けた人の6人に5人は助かっていることが分かる。死亡する確率は治療を受けなかった場合の方が高い。治療を受けた場合の死亡する確率が低くても、確率がゼロでない限り、治療を受ける人が増えれば増えるほど死亡する人が増える。二段目の図で治療を受けた人の方が治療を受けない人よりも死んだ人が多いのは、(「死に至る病になった人」で)治療を受けた人が治療を受けない人の9倍だからである。この三段目の図から、「死に至る病になった人は、治療を受けないよりも受けた方が良い」と分かる。
 五段目に、死に至る病になった1000人の半数しか病院に行って治療を受けなかった場合に、死亡する人の数がどの程度になるか図示してみた。治療を受けた人の6人に1人は死に、治療を受けなかった人の半数が死ぬのだから、治療ありで死亡するのは83人。治療なしで死亡するのは250人である。治療を受けた方が良いことが明らかである。三段目の図では治療を受けた人が多かったので治療ありで死亡した人の方が治療なしで死亡した人よりも多かった。しかし、治療を受ける人と受けない人の人数が同じならば、治療なしで死亡する人の方が治療ありで死亡する人よりも多くなる。
 四段目の図は一昨年の状態である。上記のジャーナリストは「早期発見・早期治療」の政策を批判し、「早期発見・早期治療でも死者は減らない」と言っている。確かに昨年は一昨年よりも治療を受けた人の割合が大きいのに死亡した人の数が増えている。早期発見・早期治療だけでは数が減らない。しかし、死亡した人の数が増えたのは死に至る病になった人が倍になったからである。昨年、もしも一昨年のように死に至る病になって治療を受けた人が5人に3人、60%だったら、死亡した人の数は300人になっただろう。昨年は、死に至る病になった90%の人が治療を受けたので死亡した人の数を200人に減らせた。早期発見・早期治療は効果があったのである。また、昨年、もしも一昨年のように死に至る病になった人が500人だったら、死亡した人の数は100人まで減らせたであろう。この結果は「早期発見・早期治療は間違いだ」ではなく「死に至る病になる人も減らさなければいけない」と見た方が良い。

 ここでは人口1万人の架空の国を想定して考察した。興味のある人は日本の人口で確認すると良い。「死に至る病」の所は五大疾病の一つでも当てはめて、それぞれの数値には実際のデータを入れて確認すると良いだろう。統計データを基に「病院に行くべきではない」「治療を受けるべきではない」などと主張する人がいたら、その主張が正しいか否かを、この記事の様にデータを分析して判断したら良い。私はデータを見つけられなかったので書かないが、私がデータを探した参考になるかもしれないサイトへのリンクを張っておく。


タグ:確率 統計 医療
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