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共謀罪を含む改悪組織犯罪処罰法は
【「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動(東京新聞 2017/6/16)】

現在の経済状態が無視される?

『衆議院会議録情報 第162回国会 厚生労働委員会 第23号』(平成17年5月18日)を読んで
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/162/0097/16205180097023a.html
次の部分

○水島委員 ぜひ、先ほど私が申しました心配が解消できますような、そんな結論を出していただきたいと思います。
 そして、これは本人負担というふうにした場合であっても、個別の利用者の経済状況に応じた負担軽減措置もさらなる検討が必要であると私は考えております。
 働き盛りの人で家族を扶養している立場の人がうつ病になったケースなどを考えてみるとわかりやすいんですけれども、こういう人は、往々にして所得税三十万円以上というのに当たると思います。でも、それはあくまでも前年の所得に基づくものであって、現在の経済状態を見ているものではございません。病気になったことをきっかけにリストラされるなど、前年の所得と現在の経済状態に全く関係がないということも少なくないわけでございます。所得税三十万円以上であっても、妻が専業主婦、私立の高校や大学に通う子供が二人などというよくある家庭では、経済的なゆとりが決してあるわけではございません。
 また、その男性のみが家計を支えているため、病気で収入がなくなったときの危機感は大きく、さらに医療費負担ということになりますと、患者さんの罪悪感を限りなく刺激することになるわけです。ただでさえ稼ぎ手がうつ病で働けなくなると罪悪感を非常に強く感じるもので、自殺にすらつながることがあるというのはよく知られた事実でございます。
 現在の経済状態を評価して自己負担に反映させる仕組みがつくれないものでしょうか。低所得者への配慮をきめ細かくともう何度も何度も答弁されているので、当然そのくらいやっていただけると思うのですけれども、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣 今お話しいただきましたように、基本的には前年度の所得に応じて軽減を行うということになります。しかしながら、やむを得ない事情により経済的な状況が大幅に変わる場合、これは当然起こり得ることでありますから、そうした場合など、一定所得以下に相当すると市町村等が個別に認定した場合には、負担を軽減することといたしております。その具体的な条件等は、今お話もいただいておりますし、こうした御指摘を踏まえて検討してまいります。
(『衆議院会議録情報 第162回国会 厚生労働委員会 第23号』)

 障害者自立支援法案が議題の会議。この国会議事録の一部がswan_slabさんの『+ 駝 鳥 + - 精神保健福祉法32条廃止〜自立支援医療への統合という政策転換』で引用されていて、ちょっと気になったので調べてみた。気になったのは強調表示した部分である。利用者負担の軽減措置における所得区分認定手続きに関する問題である。前年の所得に基づいて認定するらしい。
 負担軽減措置が説明されている文章を読んでみた。
 『利用者負担について』(平成17年10月6日、『障害保健福祉関係主管課長会議資料(平成17年10月6日開催)』内)の『負担上限額を定める際の所得区分の設定について』(2ページ)に次のように書いてある。

○ 所得区分の設定の際に低所得1の区分に該当するか否かの判定に当たっては、市町村の事務負担を考慮し、税情報を基本とする。
さらに、税情報に加えて、税情報では収入額を把握できないが、障害者に対する一般的な制度として給付される収入として、障害年金や、手当等による収入額を加えて判定することとする。
(『利用者負担について』)

 『税情報を基本とする』とある。具体的な算定方法の所(2ページ)に『地方税法上の合計所得金額』とあり、さらに読むと『合計所得金額』とは『地方税法292条第1項第13号に規定する合計所得金額』のことらしい(3ページ)。そこで地方税法で確認してみた。

第二百九十二条
(中略)
十三  合計所得金額 第三百十三条第八項及び第九項の規定による控除前の同条第一項の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額をいう。
(中略)
第三百十三条  所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO226.html(注意:5MB以上で重い)

 やはり『前年の所得』に基づいて利用者負担の上限額を定めるらしい。『利用者負担について』を読むと、他にも市町村民税非課税世帯の説明の所(3ページ)に『前年度』と書いてあったり、グループホームや施設の入所者の個別減免に関する『減免後の額を計算する際の収入の種類ごとの負担額』の所(7ページ)や『補足給付の認定について』の所(12ページ)に『前年』とか『前々年』とか書いてあったりして、要するに支援を必要とする現在の経済状況で認定しているわけではないらしい。尾辻厚労相の答弁には『そうした場合など、一定所得以下に相当すると市町村等が個別に認定した場合には、負担を軽減することといたしております。その具体的な条件等は、今お話もいただいておりますし、こうした御指摘を踏まえて検討してまいります』とあるが、答弁から5カ月近く後の資料である『利用者負担について』では確認することができなかった。
 5ページの『未申告者の取り扱いについて』の所に『ただし、当分の間は、利用者負担の見直しに伴い、利用者の所得状況の把握に関する市町村の事務量が増えることから、非課税であるとみなすことができると市町村が判断できる場合等については、未申告であることをもって非課税である者の取り扱いを取ることができることとする』とあるが、『当分の間は』であって、申告した場合の問題は解決されていないので、水島広子前議員の『現在の経済状態を評価して自己負担に反映させる仕組みがつくれないものでしょうか』という要望には応えていない。『経済的な状況が大幅に変わる場合』の問題は解決されていない。

 細かいことかもしれないが、気になった。私が辞職した時、その直後(失業中)の国民健康保険料の額に驚いた。高額だったのは、やはり前年の所得に応じて計算されるからである。それ以来、『前年の所得に応じて』などと見聞きすると、「それではダメだよ」と呟いている。


【障害者自立支援法案に関する私の以前のブログ記事】


タグ:自立支援法
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サラン

前年度の所得に基づく、というのはそういうこともあるわけですね。やはりその立場になってみないと気がつかない事ってたくさんあるなと思いました。
by サラン (2005-10-22 04:50)

正己

サランさん、コメントありがとうございます。
所得に応じて判断しようとすると所得の把握が必要で、それで前年の税情報に頼るしかないのだと思います。所得とは関係なく利用者のニーズに応じて判断する仕組みなら、このような問題は起こらないのだと思います。
国民健康保険料の方は昔から国会で指摘されているような気がしますが、いまだに改善されません。残念です。
by 正己 (2005-10-22 07:40)

Hemakovich

はじめまして。駝 鳥さんのところから参りました。
自分は精神保健福祉法32条利用者なのですが、自立支援法案が成立すると、世帯収入が月10万を超えていれば公費負担を受けられないと聞いた気がするのですが誤解でしょうか。うちは家族6人で就労者は非正規雇用の姉一人、両親は退職していますが年金はまだ貰えていないという状況です。

この間、議員年金廃止の話題で武部幹事長が、議員年金が廃止されて国民年金だけになったら議員の皆さんの生活設計が混乱するという旨のことを述べていて思わず笑ってしまいました。

私の親類の者は人工肛門をつけて特養に入りわずかな年金で暮らしています。あまりルサンチマン的な負の情念は抱えたくないのですが、武部幹事長の発言を聞いていると、自分達は果たして生存していると言えるのだろうか、などというような思いに駆られてしまいます。

失礼致しました。
by Hemakovich (2005-10-23 21:55)

正己

読みにくくなって混乱を招きそうなので、(2005-10-24 00:33)と(2005-10-24 01:29)の私のコメントは削除して訂正しました。その後も何度も書いたり消したりしています。ごめんなさい。m(_ _)m

Hemakovichさん、御訪問ありがとうございます。
でも、ごめんなさい。ちゃんと答えられないような気がします。そして削除したコメントで間違えました。
精神保健福祉法の32条は廃止されて、原則1割負担の「自立支援医療」に一元化されるようで、所得税額が30万円以上だと公費負担の対象外で医療保険の対象として扱われるようです。だから国民健康保険の場合は3割負担です。月収10万円(年収120万円)だと所得税は30万円を越えないと思いますが…。障害年金以外に月収10万円があるとしたら、話が違ってきそうだけど、所得税は…、よく分からないです。ごめんなさい。m(_ _)m
所得税が30万円未満なら1割負担ですが、市町村民税非課税世帯なら利用者負担に上限があって、年収80万円以下なら上限額は2500円、年収80万円を超えると上限額は5000円になるようです。月収10万円(年収120万円)だと市町村民税非課税世帯になるのかならないのか…。それから、これも障害年金以外に月収10万円があるとしたら、市町村民税は支払っているような気がしますが…。ごめんなさい。計算したことがなくて分からないです。m(_ _)m
所得税額が30万円未満で市町村民税を支払っているようなら原則的に上限はなくて1割負担のようです。ただし、その場合も例外があって、「重度かつ継続」に分類されると上限が5000円や10000円になるようです。「重度かつ継続」で所得税額が30万円以上になると上限が20000円になってますが、3年後にはどうなるか分かりません。
「重度かつ継続」についてや詳細は次のURLで確認できます。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/04/s0426-6f.html
PDF形式のファイルですが次のURLに最新のものがあります。
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb15GS60.nsf/vAdmPBigcategory50/7136EF952842475949257098001AE0A0
「資料4:公費負担医療について」です。ほとんど変わっていないような気がしますが、「世帯」の考え方が載っているようです。住民票上の「世帯」でも、別の医療保険に加入していると別の「世帯」と考えるようです。Hemakovichさんの場合は、Hemakovichさんが国民健康保険で、お姉さんが国民健康保険でないなら、Hemakovichさんとお姉さんは別の世帯になりますから、お姉さんの収入は無視できると思います。御両親が年金をもらうようになると、国民健康保険でしょうから、Hemakovichさんと同じ世帯として総収入(各自の年金の合計額)を計算することになると思います。
公費負担に関するコメントは以上です。削除したコメントで間違えてしまってごめんなさい。m(_ _)m
まだ、間違えているかもしれませんので、与党議員に確認してみたら良いかもしれません。(自立支援法案に反対してくださっている野党議員には負担をかけたくないです。(^_^;))
自立支援法案を解説している与党議員のブログがあれば良いのですが、今の所、国会議員ではなく茨城県議会議員のブログしか見つけていません。URLは次の通りです。
http://blog.hitachi-net.jp/archives/50070712.html
もしも回答が得られたら、是非、私に正解を教えてください。m(_ _)m

ところで、議員年金廃止に対するベテラン議員の対応ですが、ニュースを見て情けなくなりました。あのような人たちが国会議員に選ばれてしまう現状が悲しいです。
by 正己 (2005-10-24 02:57)

Hemakovich

正己さん、いろいろと調べて頂き、資料まで紹介して頂き、本当にありがとうございます。ネット上でこのように病気のことで親切にして頂いたことは初めてなので、言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。

公費負担の対象について、政府は狭義の疾病に絞り込もうとしていますが、これが私には理解できません。友人の中にはパニック障害で10年以上就労できずに過ごしている人もいたりします。精神疾患というのは私の体験上では幾つかの疾病を複合して病んでいる人たちが多かった実感があります。

正己さんの過去のエントリーを数日前から拝読していたのですが、ブログで精神保健福祉について熱心に考察されている方は少ないという思いがあるので、とても嬉しい気持ちになりました。

小泉政権を批判する人はネット上でもいろいろいらっしゃるけれど、郵政や自立支援法という身近な政策の各論においての批判から遠ざかっていく人が多いような気がします(私の主観かもしれませんが)。

総論において小泉さんはファシストだと叩く人は多いですが、そういうことじゃなく、政策ひとつひとつにおいて議論を深めていく作業を一層進めなければならないんじゃないか。最近はそのように考えたりしています。

本当にありがとうございました。これからも新しいエントリー、拝読させていただきますw
by Hemakovich (2005-10-24 03:02)

正己

Hemakovichさん、私の反対理由は「負担増」ではなかったので、負担額がどうなるかちゃんと考えていませんでした。勉強するきっかけを与えてくださり、ありがとうございました。m(_ _)m
今のところ、精神保健福祉に関する考察は障害者自立支援法案と心神喪失者等医療観察法だけですが、その他のことでもネット上の誰かの意見に対して異論や反論が思いついたら、このブログに書きたいと思います。もしも私の間違いに気付いたら指摘してください。
新しいエントリーも読んでくださるとのこと、とても嬉しいです。ありがとうございます。ただ、もともとこのブログは精神保健福祉をメインにしたものではありませんので、精神保健福祉から離れる記事が多くなると思いますが、御容赦下さい。(^_^;)
by 正己 (2005-10-24 03:21)

がん

私も32条適用者です。厚労省役人は、32条がなくなった政で、病院にいけなくなる人が出ることが予想されるが「症状」が悪化したらどう責任を取るんだ?と質問すると、「責任は取れません」と、はっきり言いました。
官僚なんて、狭い世界で数字をコチョコチョさわっているだけで、生身の人間の生活なんて、想像して考えてない、ということがよく分かりました。怒りに耐えません。こんなやつらの思う通りにさせまいと、たたかっています。
10月18日、大阪で「障害者自立支援法反対」の集会が3000人の結集で行なわれました。そのとき署名活動をしましたが、介護職についている人に32条適用者が多く、32条が廃止されることを知らない人が多かったです。私がゼッケンに書いていたので、それで話しかけてくる人が多かったです。
こうやってパソコンを見れる人は情報量も多いけど、パソコンを持つほどのお金も時間も無い人には、直接知らせるしかない、と思いました。
以下、怒りネットの活動報告など。

昨日25日は、参考人質疑があったそうです。さいたま市の育成会会長は反対意見を述べたそうです。育成会、がんばれ!
その他に5人いるんですが、参議院のとき4対1で反対が多かったので、その状況をひっくり返したかったのか、今回は賛成意見が多数を占めたそうです。許せん!
怒りネットとしては、その傍聴を含め、以下の行動をしました。
署名提出。衆院議員に紹介議員になってもらい議長に提出、内閣府に小泉宛の分提出。
記者会見。座り込みのその場に記者に来てもらって記者会見。朝日・フジ・読売のテレビ3社と、週間金曜日。
ビラまき。教育労働者によるデモが有ったそうで、大量のビラが吸い込まれていったそうです。教労も、「障害者」のこと考えてね。「障害者」は教育問題、考えてるよ~!

今日26日は、普通の審議があるみたいですが、採決はなさそうだ、ということです。怒りネットは、傍聴・座り込み・ビラまき・議員回りなどをやります。

26日採決がなくなった代わりに、28日は、午前に委員会採決、午後に本会議採決、ではないかと言われています。強引です。国会の運営の仕方が、本当に強引になっています。

こんな小泉政権、許しておけません。「障害者」は、自立支援法廃案・阻止を、その他の人も自分の課題で、小泉を追い詰めるたたかいを、どんどんやってください。小泉は、国会議員を相手に戦いを挑んで勝ったか知らんけど、私たち市井の生活者とはまだ戦っていません。私たち生活者の底力を、思い知らせてやりましょう!
by がん (2005-10-26 07:48)

正己

がんさん、コメントありがとうございます。
32条廃止のことを知らない人が多いのは残念です。32条廃止のことを多くの精神障害者に知ってもらうことが大切なようですね。
by 正己 (2005-10-26 08:09)

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